ビューティ・コラムcolumn

第81回 ニキビの組織反応: メカニズムと治療法について

ニキビができる時、ニキビの組織反応はいったいどうなっているのでしょうか?最適なニキビ治療法を見つけるには、ニキビのメカニズムを解明することが大切です。僕は、もともとシミのメラニンがどういう仕組みで作られるのか?効果的な美白方法はなんだろう?という研究をアメリカの国立保健衛生研究所(NIH)で3年半研究しました。僕が留学している間に、ビタミンCの誘導体が開発されました。ビタミンC誘導体は、天然のビタミンCと異なり、安定で、皮膚に入りやすいそれが原料メーカのうたい文句です。僕は、それが事実なのか確かめる実験をしました。

ビタミンCの誘導体は、確実に皮膚に吸収される、それも表皮、真皮、皮下脂肪まで確実に入るという実験を世界で初めて行ったのは僕です。これらの実験成果は、 American Academy of Dermatokogy アメリカの皮膚科学会雑誌に論文として掲載されています。ともあれ、天然のビタミンCと異なり、ローションやクリームに配合しても酸化しない、ビタミンC誘導体が手に入りました。これは皮膚科学では常識ですが、あるものを皮膚に塗った場合、成分の濃度が高いほど皮膚にどんどん吸収されます。

当時化粧品、特に医薬部外品のビタミンC誘導体の濃度は3%が上限だったのですが、僕は、6%のクリームを作りシミの治療に使用しました。ビタミンCは たんなる美白剤と異なり1.メラニンを作る細胞に害を与えることなしに、メラニン産生をおさえる2.できたしまった、メラニンを、還元して無色化する。3.あらゆる種類の活性酸素を強力に消去し、皮膚のダメージを抑える

という3つの優れた性質があるのです。

シミの患者様に使用したところ、 シミだけでなく毛穴が閉じる、赤ら顔が治る、そしてニキビが治るという患者様が続出しました。ビタミンCには直接の殺菌作用はありません。 細菌やウィルスをやっつけるリンパ球、白血球などを元気にして免疫力を高めるだけです。ですから、ニキビを引き起こすアクネ菌や黄色ブドウ球菌にビタミンCを振りかけても抗生物質のように、菌が死滅することはないのです。

ニキビは感染症なのに、なんでビタミンC誘導体が効くのだろう?

そういう疑問を持ちながら、仕事をしていると、 近所の皮膚科で抗生物質をもらって飲んでも全くよくならないといいう患者様が、大学に来院されました。

集ぞく性ざそうという重症のニキビで、フェイスラインのすべての皮脂腺から毛穴が激しい炎症を起こしています。僕は、このままだとクレーターだらけになる。そう思い、入院していただいて、抗生物質の点滴をしました。もしニキビがおできのような、感染症なら、あっという間によくなるはずです。でも1週間たっても、新しいニキビが出てきます。皮膚の表面には細菌はいませんでした。皮膚の深いところに抗生物質に抵抗性の細菌がいるのかと思い、皮膚を切りとって培養しましたが細菌は出ませんでした。

組織反応は、本来なら悪い細菌をやっつける好きな好中球が皮脂腺の周りにたくさんありました。 一部の好中球は自爆して、裁縫の中身の活性酸素を放出しています。 顕微鏡で見える大きな血管はわずか数個しかありません。

拡大像です。血管と赤血球と書いてある間に円形の血管があります。血管の中に見える、赤い細胞が赤血球です。血管の下の細胞はつぶれて、活性酸素を出しているのがわかります。そこで僕は、ピンときました。

ビタミンCは直接的な殺菌力はないけれども、あらゆる種類の活性酸素を消去する。

この患者さんの組織には活性酸素がたくさん出ていることを示している。外来で、シミの患者様にビタミンC誘導体を投与するとニキビが治る。ニキビは、活性酸素が悪さする病気かもしれない。そう思い、、この患者様高濃度ビタミンCクリームの外用をしたところ、あっという間にニキビが治りました。

その後、大勢の患者様のニキビを培養しても菌はほとんど出ない、出てもごくわずか、組織反応はこの患者様と同じ反応でした。そこで、僕は、

ニキビは感染症ではない、皮脂の過剰分泌を背景とした活性酸素病で、アクネ菌は悪化因子である

という論文を書きました。 約20年間の話ですが、日本中が大騒ぎになりました。その後ほかのドクターが僕と同じ治療を行うとニキビが治るということで、いまでは大勢のドクターが、ビタミンC誘導体をニキビの治療に、使用するようになりました。