ビューティ・コラムcolumn

第67回 手に汗にぎる:緊張すると手が荒れます

「転職した」、「仕事が忙しくなったら、妙に手が荒れるようになってきた」という方がたくさん来院されます。これらは、水仕事をして角層の水分や油分がなくなって、乾燥して荒れる普通の手湿疹とは症状が微妙に異なります。

汗は、気温が暑いと自然と出ます。でも緊張したり、ビタミンCやB群が不足している時でも手のひらや足の裏に汗をかくのです。

よく「手に汗握る」と言います。人は緊張すると、手のひらや足の裏に汗をかく性質を持っているのです。緊張状態では交感神経が優位となります。一番極端なのは、交感神経優位状態がケンカ です。手のひらに汗をかいて、棍棒を握っても、手が滑らないようになります。足の裏にも汗をかいて、軽快なフットワークでも滑らないようになります。バト ル状態が軽度継続するのが仕事なのです。私も、外来診療をして忙しくなると、手のひらや足の裏にジワーッと汗が出てきます。神経の集中を高め、眼の周りに ヒアルロン酸やdysport注射をしていても、足の裏などに汗が出てくるのが実感できます。うまくストレスを消化できない、あるいは自律神経のバランス が崩れる、そしてビタミンCやB群などの不足が起こると、とめどもなく汗をかくようになります。

右の写真の方は、手のひらや指が光って汗だらけです。(写真1)ビタミン不足と自律神経のバランスの崩れで、非常に汗をかきやすい「多汗症」という状態です。自分で汗の量が増えたという実感がなくても、汗が増加してしまいます。

汗は汗腺で作られて、汗管を通じて皮膚の表面に分泌されます。汗管の最後には角層があります。あまりに汗が多いと角層がふやけて詰まってしまいます。(図1)

でも、汗は下から出てきます。汗は外に出るべき異物です。その結果汗が皮膚に溜まるため、しばしば痒みを起こします。 また、上にある角層を破壊して皮膚の表面が乱れ、肌荒れがおこるのです。(図2)

それを外から見ると、細かいビーズが皮膚に埋まったように見えます。(写真2)このような手の湿疹を「異汗性湿疹」といいます。右の写真の方は、きっとお仕事の最中緊張しているのでしょう。

これがひどくなると、肌荒れが進行し、炎症をおこして赤くなってきてしまいます。(写真3)

ほとんどの方はストレスのサインである、ニキビ、皮脂漏性皮膚炎を合併しています。写真1の多汗症の方は、指先の肌も荒れています。(写真4)

治療をしたところ、1週間後には指先の肌荒れも治っていました。(写真5)もちろんステロイドは一切使用していません。当院で治療することにより、倦怠感もなくなり、毎日を元気で過ごすことができるようになりました。

右の写真の方は、緊張しながら立ち仕事をしている方です。足の裏が赤く、かゆくなってきました。(写真6)

拡大してみると赤みの中に、ポツポツがあります。(写真7)これは、足の異汗性湿疹です。ストレスを減らす治療とスキンケアをこれから開始する予定です。今後は快適な日々を過ごせることでしょう。