ビューティ・コラムcolumn
第32回 眼の下のクマ、眼周囲のくすみ、両頬のシミはなぜ起こるのでしょう?(1/4)<その1>アトピー性皮膚炎や花粉症皮膚炎にご注意!
最近、眼の下のクマやくすみが気になると青山ヒフ科クリニックを受診する方が増加しています。
実際にメイクを落としてもらいよく観察すると、実際に眼の下の静脈が透けて見える方がいます。眼の周囲は全身で一番皮膚が薄い場所です。なぜなら皮膚が厚いとまばたきや、眼球を動かすのが大変になるからです。そして眼の下には比較的太い静脈が走っています。若いときは静脈も細く、その周りのコラーゲンやエラスチンなどの繊維などの量も多く、しっかりしているので静脈が透けて見えることはあまりありません。ところが、歳をとることにより静脈が長い間に少しずつ太くなってきます。これは血管の内圧の影響と、血管の壁を構成するコラーゲンやエラスチンなどの繊維の衰えによります。
また眼の周りの皮膚、すなわち静脈周囲の皮膚が老化に伴い衰えて、コラーゲン、エラスチンの量の低下、表皮がより薄くなるという減少が起こります。その結果眼の下の静脈がしっかりと透けて見えてくるようになる。これがクマの正体です。そして血管周囲の組織が衰えると、全体が内圧によりでっぱってきます。これが眼の下のタルミになります。
これを治すにはどうしたらいいのでしょうか?冷え性がある方では手足にあまり血液が行かずに、顔に来ます。その結果静脈の内圧が上がりやすくなります。冷え性を解消するための漢方薬やビタミンEの内服がお勧めです。そして血管や皮膚を構成するコラーゲンの合成を促進するのになくてはならないのが、ビタミンCです。ちなみにCが不足して血管のコラーゲンが足りずに血管壁が破れてしまい、出血してしまう病気が壊血病です。またコラーゲンやエラスチンの合成を盛んにするだけでなく、分解を抑制する作用を持つのがビタミンA(レチノール)です。また眼の下やその周囲のクマや色素沈着を促進するものとしてアトピー性皮膚炎(図1)や花粉症皮膚炎(図2)があります。
皮膚の一番の機能はバリア機能です。外側からハウスダストや花粉が皮膚に侵入を防ぐ作用があります。しかしながらこれらの病気の方では皮膚のマグネシウムやビタミンCなどが不足してバリア機能が大きく低下しています。その結果ハウスダストや花粉などが皮膚に侵入し、皮膚の表皮を構成する表皮角化細胞と結合します。これらの病気の方では、異物が付着した表皮細胞をやっつけるために真皮から免疫細胞が表皮に侵入して、活性酸素などを放出します。この活性酸素を取り込んで無毒化するのが、ビタミンCやEなどのビタミン類や、そしてカタラーゼやSODなどという酵素です。しかしながら炎症の程度が激しく、大量に活性酸素が生じる場合、あるいは非常に長期に活性酸素が生じる場合、これらのビタミンや酵素が一生懸命、頑張っても、これを消去して無毒化することができません。何とか活性酸素を無毒化しようとしてメラニンが増加します。実はメラニンはサンスクリーン作用だけでなく、活性酸素を取り込んで無毒化するという非常に大事な作用を持っているのです(図3)。
それでも活性酸素を完全に消去することはできません。その結果、真皮のコラーゲンやエラスチンなどの繊維が傷つき、シワ、タルミが促進します。アトピー性皮膚炎の患者さんの眼の周囲と額全体が色素沈着を起こしています(図4)
この方はまだ20代前半ですが、額には深いシワが刻まれています。またメラニンが増加する結果、眼の周りがパンダのように色がついてきます。眼の下だけでなく、上まぶたも褐色の場合アトピー性皮膚炎や花粉症皮膚炎などの可能性が大です。化粧品を塗って、目の周りだけしみるという場合もアトピー性皮膚炎や花粉症皮膚炎による場合がほとんどです。これらの場合の治療はビタミンC、Aを外用して血管や真皮、表皮を強化することが必要です。また皮膚のバリア機能を強化して、花粉やハウスダストが皮膚に進入しない様にするには、脂溶性ビタミンCの誘導体を配合した、ケイモイスチャーや眼科用ワセリンなどを使用したスキンケアが基本となります。またビタミンB,C,Eなどの内服や皮膚を強化するマグネシウムの入用剤なども大切ですね。
そしてそれでも満足できないときにはヤグレーザーやアレキサンドライトレーザーを低出力で照射して皮膚の代謝を促進します。さらに上を目指すには、水溶性ビタミンC誘導体やディスポートの注射をします。これらの治療法の効果については22回、23回、25回そして31回のTotalBeautyclinicを参照してください。
ちなみに図5,6,7,8はアトピー性皮膚炎で額のシワや上まぶたの落ち込みだけでなく、眼の周囲の色素沈着、たるみ、クマが気になるといって来院した方です。
スキンケア、低出力レーザー、ディスポートの注射をすべて行いました。図5は治療前、図6は額にディスポートを皮内と筋肉内に注射し、眼の周囲に低出力レーザーを照射してスキンケアを行なった2週間後のものです。図7は顔全体にレーザーを照射した1週間後です。図8はさらに眼の下と頬にディスポートを浅く皮内に注射して1週間後のものです。額のシワや上まぶたの落ち込みがなくなり、眼の周囲の色素沈着やたるみも消失し、顔全体がリフトアップしています。