Dr.亀山のトータルビューティー・コラム Column

徹底解説ニキビ5:炎症のメカニズムとビタミンABCの作用について

皮膚の共生菌であるアクネ菌が引き起こすニキビの炎症反応が、どのようにして起こるかそして炎症反応に対するビタミンABCの効果について最初に解説します。

正常状態の毛穴が開いていて、ある程度の酸素が毛穴の中に入り込む状態では嫌気性のアクネ菌はキャンプファクターという毒素を産生しません。ヒトの共生菌として生活しています。毛穴が閉塞して嫌気性の環境という生育にとって都合のいい環境になると、生育領域を拡大しようとしてアクネ菌はキャンプファクターを産生します。キャンプファクターはアクネ菌に接する表皮細胞、免疫担当細胞の細胞膜に穴をあけて細胞を死に至らしめる毒素です。この毒素に対してヒトが免疫反応、炎症を起こし、ニキビが発症するということが最近判明しました。ニキビの発症の条件として、毛穴の詰まりが必要だということは以前からわかっていましたが、毛穴の詰まりはキャンプファクターという菌体外毒素の産生に必要だったのです。キャンプファクターの詳細についてはコラム、ニキビの発症メカニズム1、”キャンプファクターについて“をご参照ください。ヒトはアクネ菌などの細菌に対しては3つのセンサーを持って監視しています。それはToll様受容体(TLR2)、Nod-like receptor P3(NLRP3)インフラマソム、Proteinase-activated receptor2(PAR2)よりなります。TLR2、NLRP3はパターン認識受容体です。パターン認識受容体はグラム陽性細菌や陰性細菌の細胞壁の構造のパターンや毒素のパターンなど、ヒトが持っていないパターンに反応するようにセットされています。PAR2は蛋白分解酵素を認識する受容体で細胞表面に存在します。ヒトやアクネ菌の蛋白分解酵素に反応します。

TLR2をはじめとする3つのセンサーは単球、マクロファージ系をはじめとする各種炎症細胞、表皮細胞、皮脂腺の細胞が保持し、TLR2、PAR2は細胞表面に、インフラマソムは細胞質に存在します。TLR2が認識するのはアクネ菌のキャンプファクターという毒素です。アクネ菌がキャンプファクターを産生するようになると、単球、マクロファージなどの免疫担当細胞は表皮に入り込んで、毛穴の出口の部分に進んで、アクネ菌が産生するキャンプファクターを感知します。またアクネ菌が産生する蛋白分解酵素はPAR2がキャッチします。アクネ菌の一部は単球やマクロファージを細胞内に取り込む貪食作用(ファゴサイトーシス)により取り込まれて、細胞質内のNLRP3インフラマソムで感知されます。NLRP3インフラマソムが反応するアクネ菌の成分はまだ明らかになっていません。アクネ菌を検出するのになぜ3つのセンサーがあるかということですが、ひとつやふたつでは、アクネ菌などの細菌を検出できない可能性がある。念には念を入れて検出して、徹底的に排除しようということだと思います。

アクネ菌に接した免疫担当細胞は活性酸素を放出し、ついでIL1β、TNFαなどのサイトカインやMatrix metalloproteinase (MMP)、トリプターゼなどの蛋白分解酵素を次々と放出します。この反応は周囲の炎症性細胞を巻き込むだけでなく、血管内から真皮に多数の炎症性細胞を動員します。この炎症は発熱、発赤、腫脹、疼痛という臨床症状を伴いす。           

                                       

ニキビ発症後の真皮の炎症を起こす因子ですが、まず炎症性細胞とアクネ菌の接触により活性酸素が増加します。その後IL1βなどのサイトカインが上昇します。その後、活性化 した炎症性細胞や表皮細胞、皮脂腺細胞からはHMGB1や蛋白分解酵素が産生され、濃度はじわじわと上昇してきます。これらの因子は次々と周囲の炎症性細胞を巻き込み、多くの炎症性細胞が、大量のサイトカイン、蛋白分解酵素、活性酸素を生じるようになります。ターゲットになるアクネ菌だけでなく、周囲の正常組織も炎症による損傷を受けて、疼痛や腫脹が出現、増加するのです。上の図は通常の感染症の場合の活性酸素やサイトカインの濃度の遷移状況を示しましたが、ニキビの場合大量の毛穴で次々と炎症が生じるので、活性酸素やサイトカインの濃度は低下することなく上昇していきます。いわゆる炎症の悪循環が生じてしまうわけです。蛋白分解酵素は血管から病巣組織に炎症性細胞が移動(遊走)するのに邪魔となる真皮のコラーゲンなどを分解、変性させます。またアクネ菌を破壊、変性させるのに使用されます。活性酸素は、炎症性細胞の周囲に存在するアクネ菌や、細胞内に取り込んだアクネ菌を酸化、変性させるのに使用されます。サイトカインは炎症性細胞が効率よく活性酸素や蛋白分解酵素を産生するための活性化因子です。

TLR2などのセンサーにより活性化された毛穴周囲の炎症性細胞はサイトカインを放出して、ほかの炎症性細胞を血管内から真皮に移動させます。多数の炎症性細胞が血管内から真皮を移動して、アクネ菌の存在する毛穴、皮脂腺周囲に集合して、蛋白分解酵素や活性酸素を放出してアクネ菌を攻撃します。

 

好中球はさらにアクネ菌を細胞内に取り込む、貪食(ファゴサイトーシス)を行い、蛋白分解酵素や活性酸素を細胞内に放出して、効率よくアクネ菌を一掃しようとします。アクネ菌を取り込んだ好中球はやがて死んでしまいます。 一部のアクネ菌はキャンプファクターを産生して好中球から脱出します。死んだ好中球をマクロファージという炎症性細胞が貪食して、アクネ菌を一掃して炎症反応は終わります。

以上アクネ菌に対する炎症反応をまとめると次のようになります。毛穴が詰まりアクネ菌がキャンプファクターの産生を開始する。センサーであるTLR2、インフラマソム、PAR2で検出する。活性化した肥満細胞などがサイトカインや蛋白分解酵素を放出して血管透過性を亢進する。血液中から皮膚に好中球、単球、リンパ球などが移動してさらに大量のサイトカインを放出。
好中球がアクネ菌を貪食する。好中球は死ぬ。死んだ好中球やアクネ菌をマクロファージが貪食して炎症が終わる。組織の修復が始まる。

以上の反応を模式的に記します。

ビタミンABCは皮脂分泌を抑制する作用を持ちます。その結果皮脂を餌とするアクネ菌の数が低下します。ビタミンABCはキャンプファクターを検出するTLR2の発現を抑制し、過剰なサイトカインの産生を抑え、活性酸素を消去して炎症を抑えます。また炎症の際生じるIL1βなどにより表皮細胞が過剰に増殖し、過剰な角化を抑制して毛穴が閉塞するのを抑えます。そして過剰な炎症を抑えた結果、正常組織が損傷するのを抑えます。代謝を促進して、組織の修復を促進します。またメラニン産生を促進してニキビの後に起こる色素沈着を抑制します。ということが一連の作用として起こります。(なおビタミンABCの詳しい作用についてはABC毛穴レスコース誕生をご参照ください。)

ところで、ニキビの発症機序には4つの因子が必要であるとされています。

アクネ菌
皮脂過剰分泌
毛穴の閉塞
炎症

これに対して

ビタミンABCは皮脂分泌を抑制してアクネ菌を減らします。
ビタミンABCは皮脂の過剰分泌を抑制します。
ビタミンABCは毛穴の閉塞を抑制しアクネ菌によるキャンプファクター産生を予防します。
ビタミンABCは過剰な炎症を抑えます。

ということでビタミンABCはニキビの4条件すべてを減らす作用があるのです。

炎症とは病原体の侵入部位に炎症性細胞が集まり、病原体を炎症性細胞が取り込んで一掃するファゴサイトーシスを究極の目的のひとつとしています。ファゴサイトーシスを行うのは好中球やマクロファージという炎症性細胞です。ビタミンABCが血液中や皮膚に大量に存在すると、血液中の炎症性細胞は容易に血管から真皮に飛び出し、アクネ菌の存在する病巣まで遊走します。そしてアクネ菌を細胞内に取り込むファゴサイトーシスを行います。さらに活性酸素や蛋白分解酵素を産生してアクネ菌を殺菌します。ビタミンABCは代謝を促進する作用を持っています。盛んな代謝を利用して活性酸素や蛋白分解酵素を効率よく産生してアクネ菌を除去します。しかしながら細胞外に流出した活性酸素は速やかに消去して組織の損傷を抑制します。アクネ菌を取り込んだ好中球は死にます。好中球の死に方には2つあります。一つはアポト-シスというプログラムされた細胞死です。

これは新たな炎症を起こしません。もう一つはネクローシス、あるいはネトーシスというもので、新たな炎症を起こします。ビタミンABCは遊走、ファゴサイトーシス、活性酸素による殺菌、アポトーシスを促進し、ネトーシスを抑制してアクネ菌を一掃して、新たな炎症を起きないようにさせる作用を持っています。ビタミンABCは余分な活性酸素やサイトカインを抑制して、過剰な炎症や、自己組織が傷つくのを抑制しながら、アクネ菌を一掃するという炎症本来の役割は促進するのです。風邪をひいたらビタミンCを摂取せよとは昔からよく言われてきました。ビタミンABCは、細菌やウィルスを一掃する免疫を強化する作用と、過剰な炎症を抑えるという2つの相反する作用を併せ持っているのです。下にビタミンABCのニキビの炎症に及ぼす作用を示します。

 

ビタミンABCは血管から好中球が飛び出してアクネ菌を貪食するのを促進してアクネ菌の除去効果を促進しますが、過剰な活性酸素を消去し、サイトカインのカインの産生を抑え、アポトーシスを誘導して炎症を抑制します。上の図に示すようにビタミンABCは、病原菌を一掃するという感染に伴う炎症の終着点である貪食作用を促進します。ファゴサイトーシスを起こす際に、炎症性細胞は周囲の組織からビタミンCをどんどん取り込み、その濃度は血液中の濃度の10倍近くまで上昇します。常に血液中と皮膚組織にビタミンCが十分にないと、好中球やマクロファージは十分にファゴサイトーシスを行うことができないのです。炎症の際にIL1やTNFαなどのサイトカインが産生されます。これらのサイトカインに接した炎症性細胞や表皮細胞はNF-kBという転写因子を活性化させて、自らもIL1βなどのサイトカイン産生をするようになります。このようにして炎症は拡大するのですが、ビタミンABCはサイトカイン産生だけでなく、サイトカインやストレスなどによりNF-kBが過剰に活性化するのを抑制します。すなわちビタミンABCはアクネ菌を効率よく除去する貪食作用を誘導して速やかなアクネ菌の除去をするが、過剰な炎症を抑制して組織障害を抑制するのです。