Dr.亀山のトータルビューティー・コラム Column

トラネキサム酸が毛穴を閉じ、赤味を低下させアンチエイジングを実現する機序と効果

トラネキサム酸の作用機序について

1.序章

トラネキサム酸は止血作用、抗炎症作用を持つことが知られていて、内科領域で使用されています。外用すると美白作用を発揮することも周知の事実です。トラネキサム酸を外用することにより、皮膚のバリア機能を増加させ赤ら顔の酒さに効果を発揮することが報告されています。その機序としては表皮角化細胞にトリプシンという蛋白分解酵素を作用させた際に細胞内へのシグナル伝達を司るカルシウムの流入を抑制することが報告されています。その結果、カリクレインという角層の剥離を促す蛋白分解酵素の産生が低下して皮膚のバリア機能低下を抑制するのです。表皮細胞のトリプシンの受容体はPAR2という蛋白分解酵素受容体です。PAR2は血管内皮細胞にも発現されていて血管透過性を制御することが報告されており、カルシウムイオンが透過性を調整する鍵であることが判明しています。PAR2は皮脂腺細胞や繊維芽細胞や炎症性細胞である肥満細胞にも存在します。アドナは止血剤として広く使用されていますが、薬剤情報にはトリプシンによる血管透過性を防止すると表記されています。すなわちトリプシンが血管内皮細胞に働いて透過性を上げるのをアドナが防止するということです。これらの結果はアドナやトラネキサム酸が血管内皮細胞の透過性を調整して、ビタミンABCやカフェイン同様に透過性を低下させて美白作用、赤み低下作用、抗炎症作用だけでなく、皮脂分泌抑制作用も発揮する可能性を示唆しています。そこでトラネキサム酸とアドナをイオン導入してみました。

実際にトランサミンとアドナをイオン導入すると下の図に示すように顔の明度指数は増加して赤み指数は低下しました。

下の図に示すようにまた毛穴レス美白ローションにトラネキサム酸とアドナを添加して外用したこところ、より一層明度指数が増加して赤み指数が低下しただけでなく、毛穴が縮小しました。

上の方は毛穴レス美白ローションにトラネキサム酸とアドナを添加して20日間外用しました。明度指数が増加して赤み指数が低下しただけでなく、矢印で示す毛穴が縮小しています。

 

2.トラネキサム酸はリジンの誘導体

下の図に示すようにトラネキサム酸はアミノ酸であるリジンの誘導体です。プラスミノ―ゲンはトリプシンなどの作用によりプラスミンという蛋白分解酵素に変換して血液を凝固させるフィブリンを分解する繊維素溶解減少を起こします(要は血液を固まりにくくすることです)。トラネキサム酸はプラスミノーゲンやプラスミンのリジン結合部位に結合して、プラスミンがフィブリンに結合するのを抑制して凝固した血液が溶解して出血しやすくなるのを抑えます。これが、トラネキサム酸が抗プラスミン剤と呼ばれ、止血剤としての効果を発揮するメカニズムです。また、プラスミンは炎症性細胞のリジンに結合して炎症性細胞を活性化して活性酸素、サイトカイン、蛋白分解酵素を放出して炎症を激しくします。炎症の際に生じるサイトカインや活性酸素あるいは蛋白分解酵素は皮脂腺細胞に対して皮脂分泌を促進することが報告されています。トラネキサム酸は炎症を抑えるので皮脂分泌は低下するということになるのです。このようにトラネキサム酸が働きかけるプラスミンは多彩な作用を持っています。

3.トラネキサム酸のアンチエイジング作用

トラネキサム酸を内服したり外用すると皮膚のシワが低下することが報告されています。この時肥満細胞という炎症性細胞が皮膚から低下します。このメカニズムについて考えました。

肥満細胞は表皮直下、皮脂腺周囲など皮膚に多数存在して、ニキビや酒さあるいは蕁麻疹や光老化などの発症に深く関与してします。上の図に示すようにアクネ菌は人の組織を破壊しようとして蛋白分解酵素を放出します。紫外線も皮膚の蛋白分解酵素産生を促進します。アクネ菌が放出した蛋白分解酵素は肥満細胞のPAR2という蛋白分解酵素受容体に結合します。アクネ菌由来の蛋白分解酵素を感知した肥満細胞はトリプターゼという蛋白分解酵素を放出してアクネ菌を分解しようとします。要するにアクネ菌と人が蛋白分解酵素をお互いに放出して、アクネ菌は人の組織を破壊しようとして、人はアクネ菌を一掃しようとするのです。トリプターゼは内皮細胞や表皮細胞が放出するプラスミノ―ゲンに作用してこれをプレスミンに変換して各種炎症性細胞や内皮細胞表皮角化細胞に作用して強い炎症を起こします。要は炎症性細胞が血管から皮膚に飛び出して、アクネ菌を一層するための炎症反応のアシストが起こるのです。プラスミノーゲンはカリクレインを介してブラジキニンを生じます。ブラジキニンは肥満細胞のブラジキニン受容体に結合してさらに肥満細胞を活性化して、炎症の程度をますます強めます。上のバツで示した部位がトラネキサム酸の作用部位です。トラネキサム酸は肥満細胞がブラジキニンやトリプシンの作用で活性化して皮膚で増加するのを抑える事がわかります。

 

4.トラネキサム酸の表皮細胞、内皮細胞への作用

興味深いことに、上の図に示すように表皮細胞や血管の内腔を覆う内皮細胞は常に自分自身でプラスミンやトリプシンなどの蛋白分解酵素を産生して自分自身のPAR1,PAR2という蛋白分解酵素受容体を刺激しています。その結果表皮細胞はメラノサイトが産生したメラニンの取り込みを行ったり、アクネ菌などの異物を認識したり、貪食する作用を維持し、インターロイキン1や活性酸素を産生して異物の侵入に備えています。そしてカリクレインは角層の剥離を促進して、異物を含む表皮成分の排出を促進します。血管内皮細胞も血管透過性を上げて、異物が侵入すると直ちに炎症性細胞を血管周囲に配置するようにしています。いわばごく弱い慢性炎症を起こしています。この程度が適正であれば問題はないのですが、炎症の程度が激しくなると、動脈硬化、糖尿病、高血圧、ニキビ、赤ら顔、毛穴の開きやシミ、しわ、皮膚バリア機能低下などの皮膚トラブルを引き起こします。この過剰な炎症を抑制するのがトラネキサム酸です。 上の図で示した黄色いバツの部分をトラネキサム酸は抑制します。トラネキサム酸やアドナを外用したりイオン導入すると、瞬時に肌は白くなり、赤みが低下します。これはトラネキサム酸が血管内や細胞外のプラスミンに結合して、プラスミンがPAR1に結合するのを抑制する以外に、トラネキサム酸やアドナが蛋白分解酵素受容体に活性化後に起こるフォスフォリパーゼCという酵素の活性化や細胞内へのカルシウムの流入というシグナル伝達に必要な要素を抑えて、蛋白分解酵素の活性化を抑制するために起こる現象です(下図参照)。下の図でactin stress fiber 形成とVEカドヘリンという接着因子の減少が内皮細胞の隙間を大きくして皮膚を赤くスストレスのですが、トラネキサム酸はこれを抑制して明度指数増加と赤味低下を実現します。

 

平常状態では表皮細胞、内皮細胞、肥満細胞などは蛋白分解酵素を産生して、ある程度の血管透過性を上げて、目に見えない穏やかな炎症を起こしています。この時皮膚は内皮細胞隙間から赤血球が透けみえ赤くなります。この状態が進むと内皮細胞の感覚が増加した非常に血管透過性の増加した状態になります(下図)。透過性とは内皮細胞の隙間が増加して、血管内の液体成分や炎症性細胞が血管外に出やすくなった状態です。

この状態にトラネキサム酸を投与すると上のバツ印の部分が抑制されます。

その結果上の図に示すように内皮細胞を結びつけるVEカドヘリンがしっかりと内皮細胞を結び付けて、赤血球が血管の外から見えなくなり、皮膚は白くなり、赤みが低下するのです。これがトラネキサム酸を外用したりイオン導入すると皮膚の明度が増加して赤味が低下する機序です。

上の図に示すように表皮細胞は自分自身で産生したカリクレインや肥満細胞が産生するトリプターゼという蛋白分解酵素で自らの蛋白分解酵素受容体であるPAR2を刺激して、メラノサイトが産生したメラニンを表皮細胞内に取り込んで、皮膚全体にメラニンが広がるようにして、皮膚を褐色にして紫外線によるダメージから皮膚を保護しています。しかしながら、この反応が強くなりすぎると皮膚の色素沈着が起こってしまいます。上の図に示すようにトラネキサム酸は黄色い矢印で示した部分を抑制して美白作用、抗炎症作用を発揮します。トリプターゼは表皮直下や血管周囲に存在する肥満細胞を活性化して、炎症を引き起こし、しわ、たるみだけでなく、にきび、赤ら顔の発生にも関与しています。

5.トラネキサム酸の皮脂分泌、毛穴への作用

トラネキサム酸を外用したり、イオン導入すると毛穴が閉じる現象が認められました。

上の図はトラネキサム酸とアドナを導入前後のものです。矢印で示した毛穴は明らかに導入後閉じています。トラネキサム酸と蛋白分解酵素受容体の関係について調べてみると非常に興味深いことがわかりました。

皮脂腺細胞はPAR2という蛋白分解酵素の受容体を持っていますが、PAR2が皮脂腺細胞の分化に必須であることが判明しました。そして分化後に皮脂腺の平常レベルでの皮脂分泌能を保つのにPAR2によるある程度の刺激が必要であるということが判明したのです。皮脂腺周囲には好中球や肥満細胞が存在しています。これらの細胞が放出するエラスターゼやトリプターゼという蛋白分解酵素が皮脂腺細胞のPAR2を刺激して、基礎レベルの皮脂分泌が維持されています。基礎レベルでのPAR2の発現はわずかです。皮膚に、にきびや脂漏性皮膚炎などの炎症が起きると、皮脂腺周囲には多数の炎症性細胞が集まります。その大量の蛋白分解酵素が炎症性細胞から放出されます。PAR2の発現も増加して皮脂分泌は亢進します。皮脂を餌とするアクネ菌が増加して、アクネ菌由来の蛋白分解酵素も増加します。PAR2を刺激された皮脂腺細胞はインターロイキン1(IL1)やインターロイキン8(IL8)などの炎症性サイトカインを放出して、皮脂腺周囲にますます炎症性細胞を集めてしまい、炎症を激しくするという悪循環を起こします(下図)。

そのような状態でトラネキサム酸を内服あるいは外用すると、蛋白分解酵素のうちプラスミンに直接結合してほかの炎症性細胞のC末端のリジンに結合して炎症を激しくするのをよく制します。また蛋白分解酵素が結合するPAR1やPAR2のシグナル伝達を抑制して、これらの活性を抑制します。その結果皮脂分泌や炎症が抑制されるのです。上の図の黄色いバツで支援した部分がトラネキサム酸の抑制部位です。

プラスミンやトリプターゼなどの蛋白分解酵素は非常に多彩な作用を持っています。トラネキサム酸は美白作用、抗炎症作用、止血作用が有名ですが、上の図に示すように蛋白分解酵素であるプラスミンに結合して、直接的にプラスミンが炎症性細胞の表面にあるリジンというアミノ酸に結合して炎症などを抑制するだけでなく、フィブリンに結合して血液凝固状態を解除する繊維素溶解減少を抑えます。トラネキサム酸はさらに、PAR1やPAR2のシグナル伝達を抑制して間接的にこれらの作用を抑制します。トラネキサム酸はシミやくすみ、しわやたるみ、にきびや毛穴の開き、敏感肌や感動肌などの4大肌トラブルすべてに効果を発揮します。ビタミンCやカフェインもこれらの肌トラブルすべてに効果を発揮しますが、その作用機序は異なります。ですからビタミンABCやグルタチオンやカフェインとトラネキサム酸を併用してスキンケアをすることは肌トラブルに対する相加効果を発揮するのです。

上の方はトラネキサム酸と一緒にカフェイン、シトルリンをイオン導入しました。導入後(右図)は色が白く赤味が低下して、毛穴が縮小しています。

上の方はトラネキサム酸とビタミンCとカミツレエキスを配合したカクテル美白リフトアップローションを外用しながら、毎週イオン導入を行いました。6週間後には眼の下のシワとほうれい線が浅くなっています。トラネキサム酸は紫外線などにより表皮細胞などが産生するカリクレインなどの蛋白分解酵素が肥満細胞という炎症性細胞を活性するのを抑制して、アンチエイジング作用を発揮することが報告されています。ビタミンCの外用だけでは、このような著明なシワの低下は起こりません。トラネキサム酸が肥満細胞を中心として引き起こされる炎症を抑えたためにこのようなことが起こったのです。トラネキサム酸は新しく開発した毛穴引き締めホワイトエッセンスにも配合されています。毛穴引き締めホワイトエッセンスにはやはりアンチエイジング作用を発揮するカフェインやシトルリンが含まれています。ビタミンABCやトラネキサム酸そしてカフェインの協調作用による毛穴縮小効果、炎症抑制効果、そしてアンチエイジング作用をぜひ体験してください。  またこれらの成分を利用したトリートメントコースであるソニックウオッシュピーリングコースやハイパーエナジー導入コースも完成しました。 皆様のご来院をお待ちしております。