第29回

VCはストレスの指標であるコルチゾールを低下させ、多幸感の指標であるエンドルフィンを増加させます(1/9)



以前に“脳内麻薬は皮膚麻薬”の項で、一個の細胞からなる単細胞生物にも多幸感をもたらし、疼痛を遮断するエンドルフィン様物質が存在することを報告しました。
そしてこの物質がそれぞれの細胞にとって“ストレスから逃れるためのご褒美なのかもしれませんと述べました。
ストレスは生体にゆがみを与える刺激であるといいましたが、我々生物にとって最大のストレスはいったい何なのでしょう?

人間にとっては、長期間拘束を受け、イライラしてもニコニコしなければならない“仕事"が最大のストレスだと思います。
ではこれを生物全体で考えてみましょう。
我々生物は細胞からなります。
ですから生物にとっての最大のストレスは細胞レベルでのストレスでしょう。
私は細胞が死を迎える可能性のある飢えが最大のストレスではと考えます。
細胞を培養する際に、培養液の交換を怠ると細胞はあっという間に死んでしまいます。
私は実験で散々このような失敗を繰り返してきました。
タンパク質、炭水化物、脂肪などの3大栄養素が不足することが、細胞にとって最大の危機すなわちストレスなのでしょう。
人間の進化の歴史は常に飢餓との戦いでした。
日本でも飢餓というストレスが解消されたのはつい最近のことと思います。
ビタミンCは美白作用や活性酸素の除去作用を持ちますが、その最大の作用は脂肪や炭水化物などの栄養素を細胞内やその発電機であるミトコンドリアにスムーズに入れる作用であることは25回の“老化撲滅大作戦その5ですでに述べました。
またミトコンドリアの働きについては“25回の老化撲滅大作戦その6"で詳しく解説しました。
もし飢餓が細胞にとって最大のストレスであるならば、ビタミンCを大量にとることにより、各種栄養素がスムーズに細胞内に入りその飢餓は解消され、ストレスにより増加するステロイドホルモン(コルチゾール)は低下し、多幸感の指標であるエンドルフィンが増加するはずです。そこで私はビタミンCのコルチゾールやエンドルフィンに及ぼす影響を実験しました。
このエンドルフィンは中枢レベルだけでなく、表皮角化細胞などからも分泌されることが最近明らかになっています。

まず10名の女性に1日300mgのビタミンCを含むアセロラドリンクを1日に3本から4本、約1ヶ月間何回かに分けて取ってもらいました。
1日900mgから1200mgのビタミンCをとることになります。
その結果10名中8名で血液中のビタミンCの濃度が増加しました。
低下したナンバー9の方はあまりおいしいので数日前にアセロラを飲みきってしまった方です。
またナンバー4の方は数日前に下痢をしてしまい、アセロラが飲めなくなった方です。
いずれにしても血液中のビタミンCの量は100mlあたり0.86mgから1.3mgへと約1.4倍増加していました(図1)
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そしてストレスの指標であるステロイドホルモンのレベルは11.5microg/dlから9.63microg/dlに低下しました。
平均で約16%低下したことになります(図2)
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そしてアセロラ前後のエンドルフィンのレベルを測定したところ、驚くべき事実が判明しました。
エンドルフィンの正常値のレベルの上限や下限はまだ決まっていませんが、アセロラを飲むことにより27.3pg/mlから37.4pg/mlと約1.4倍増加したのです(図3)
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これらの実験より、ビタミンCを摂取することにより細胞のストレスが低下し、細胞の多幸感が増加したということになります。
また今回お示ししませんでしたがステロイドの分泌を促す“副腎皮質刺激ホルモンACTHの分泌パターンはステロイドホルモンの分泌パターンと同様でした。
すなわち、ACTHが増加した場合、ステロイドホルモンも増加し、ACTHが低下した場合にはステロイドホルモンも低下する傾向が観察されました。
前回のコラム“脳内麻薬は皮膚麻薬"では、恐怖、ストレス、紫外線にさらされた場合には、中枢性に共通のホルモン前駆体からACTH,MSHが共通に分泌されるけれども音楽、スポーツ、精神的感動ではエンドルフィンの分泌だけが増加するのではと推定しました。

音楽、スポーツ、精神的感動は感情を支配する脳すなわち中枢レベルでエンドルフィンだけを大幅に増加させ、ほかのホルモンはあまり増加させないのでしょう。
なぜなら音楽を聴いたり、スポーツすることにより皮膚が黒くなったり、顔がたるむヒトはいないからです。
そしてビタミンCを取るということによりおそらく細胞レベルで、エンドルフィンだけが大幅に増加したのでしょう。
このことはおそらく中枢レベルでも同じことが起こっているであろう可能性を示唆します(図4、5、6)
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さて、今までなぜビタミンCをとると皮脂の分泌が低下するかが不明でした。
ストレスが加わると、皮脂の分泌を増加させるステロイドホルモンがまず増加し、それが男性ホルモン(アンドロゲン)を増加させることはストレスと内分泌と皮膚症状の項ですでにお話しました(図7)
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このとき多幸感をもたらすエンドルフィンも分泌されるのですが、ストレスのつらさほうが圧倒的に多く、ストレスの際には多幸感などみじんも感じないのでしょう。
ステロイドホルモンも男性ホルモンも皮脂分泌促進作用を持っています。
でもビタミンCをとることによりステロイドホルモンが低下し、ついで男性ホルモンが低下すれば皮脂の分泌は当然低下します。
またイライラすると皮脂腺を取り囲む神経からサブスタンスPという神経伝達物質が分泌され、皮脂の分泌を促進することはすでに述べました。
驚くべきことにはエンドルフィンはサブスタンスPの分泌を低下させる作用があるのです。
その結果皮脂の分泌も低下するのです(図8)
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考えてみれば中枢や細胞レベルで多幸感があれば、イライラしなくなり、サブスタンスPの分泌が低下するというのもあたりまえの話ですよね。
いずれにしてもビタミンCはホルモンレベルでは、ステロイドホルモンや男性ホルモンを低下させ、神経レベルではサブスタンスPを低下させることで皮脂の分泌を低下させるのです(図9)
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興味深いことには、ナンバー9,10の方のエンドルフィンが急増しています。
実はこの二人はドクターケイの社員なのです。
採血はすべての方において午前11時に行いました。
ドクターケイのオフィスは青山ヒフ科クリニックと同じ階にあります。
採血前のストレスもないはずです。
そしてナンバー1から8の方は土曜日しか休みがとれない、よその会社ボランティアの方だったのです。
せっかくの休日にわざわざ青山ヒフ科クリニックに行かなくてはならないというストレスが、エンドルフィンのレベルをあまり上げなかったのではと私は推定しています。
そして統計を取った10名の方以外にもうひとりアセロラを飲用して、採血した方がいます。
この方は2回目の採血の数日前から徹夜が体調をこわして、おまけに風邪をひいて発熱してしまいました。
発熱はホルモンの分泌に影響を与えるので、敢えて統計からはずしました。この方はアセロラを飲むことで血液中のビタミンCのレベルは0.33mg/dlから1.36mg/dlまで約4倍上昇しました。
この方のコルチゾールのレベルは3.9microg/dlから18.4microg/dlと4倍以上大幅に増加しました。
このときつらさを紛らさせるためにエンドルフィンの分泌も上昇しましたが、そのレベルは27pg/mlから30pg/mlとたった1割しか上がらなかったのです。
これはストレスが強い場合の典型なパターンです(パターン1)
そしてナンバー6の方はコルチゾールは15,4から11.1に低下して、エンドルフィンは30から42と上昇しています。
これはビタミンCにより細胞レベルでストレスが低下したパターンです(パターン2)

そしてナンバー9の方はコルチゾールレベルが9.3から8.1とやや低下して、エンドルフィンレベルが31から60と大幅に上昇しました。
これもビタミンCにより細胞レベルでのストレスが低下したパターンです(パターン3、図10)
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これら3つのパターンの方の肌の変化はどうなったのでしょうか?

この表を見る限りではパターン1の方では肌の調子が悪くなり、パターン2,3の方では肌の調子がよくなったと予測されます。
実際には驚くべきことにパターン1の方ではニキビがなくなり、キメも細かくなっています(図11)
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ストレスの増加にもかかわらずアセロラの摂取を継続することでなんと肌質が改善してしまったのです。
この結果には私もびっくりしました。パターン2の方は軽い乾燥肌を伴う赤ら顔で毛穴の開いた方肌でしたが、乾燥肌が改善し、肌の赤みが低下して毛穴も閉じフェイスラインもシャープになりキメも細かくなっています(図12)
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パターン3の方は絶えずにきびがありましたが、ニキビが全く消失しています。
もちろんキメも細かくなっています(図13)
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これら3人の方は、肌が日々きれいになっていくのがうれしいと言ってました。
この肌質の変化は中枢レベルでのエンドルフィンの増加を招くはずです。
これらの方々にはビタミン剤や抗生剤などの投与は全くしていません。
ビタミンCは中枢、細胞、いろいろなレベルでストレスから開放する作用を発揮するようです。
今まで発表された論文を調べたところ、ビタミンCがステロイドホルモンのレベルを低下させるという報告はありました。
しかしながらビタミンCがエンドルフィンのレベルを増加させるという報告は見当たりませんでした。
私の知る限り、ビタミンCがエンドルフィンを増加させるという実験、そしてレポートはこれが世界で初めてです。
ビタミンCはどうやら無限の可能性を持っているようですね。