第41回

老化撲滅大作戦<その10>お肌帝国の危機を救え:キーは血管ネットワークとビタミンC パート1:血管ネットワーク、一酸化窒素とビタミンCについて



人体は約60兆の細胞からなる細胞帝国です。
人体最大の臓器が実は皮膚なのです。
肌という帝国に栄養補給をする生命線が血管ネットワークなのです。
全身の血管を開いたり閉じたりコントロールしているのが、自律神経、いわゆる交感神経と副交感神経といネットワークなのです。
全身の血管を開いたり閉じたりコントロールしているのが、自律神経、いわゆる交感神経と副交感神経ということは以前から判明していました。
すなわち細胞は、栄養を補給する血管とそれを支配する神経により維持されているのです。
そしてヒトは神経、血管とともに老いるといわれています。
すなわちお肌帝国の命運を握るのは神経そして血管なのです(図1)

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最近イライラしがち、そうしたらなんとなく肌の調子が落ちてきたかなと思うことはありませんか?
毛穴が開いて、かさついて、くすんで、顔全体のハリがなくなってなんてことがあったら要注意です。
肌への血流、とくに顔の血流は、交感神経が緊張すると大幅に低下してしまうのです。
交感神経は仕事をしているときなど緊張状態のときに優位になる神経です。
いわゆるバトルモードで優位になる神経です。
究極のバトルモードはいわゆるバトルですが、この際相手に殴られてもいいように皮脂の分泌は増加しますが、血流不足による代謝速度の低下により、肌のバリア機能は低下し、コラーゲンの合成も低下します。
その結果、毛穴が開いているけども、肌がカサカサして、たるんだ肌となってしまうのです。
一方マッサージなどでリラックスしたときに優位になる副交感神経が優位になると、顔の肌の血流は大幅に増加します。
副交感神経が優位になり神経の末端からアセチルコリンが分泌されます。
その結果、血管壁に存在する内皮細胞より、内皮細胞由来平滑筋弛緩因子が分泌され血管が拡がるのです。

内皮細胞由来平滑筋弛緩因子が一酸化窒素ガス(NO)であることが判明したのが、1987年のことです。
体のなかで活性酸素同様に悪さをすると考えられていた酸化窒素類ですが、一酸化窒素がなんと血管を拡張するという善玉作用を持っているという事実は人々に驚きをもって迎えられたのです。
また、血管を収縮させる因子として活性酸素が知られています(図2)
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すなわち全身の血流はNOと活性酸素の微妙なバランスによりコントロールされているのです。
いったん血流が増えると、一酸化窒素ガスの産生が増加し、生体はその血流を維持しようとします。
しかしながら一酸化窒素ガスとともに活性酸素が共存すると、一酸化窒素ガスはペルオキシナイトライトという非常に毒性の強い物質に変換して、血管や生体にダメージを与えてしますのです。
その結果、高血圧、動脈硬化、脳梗塞などが生じて、人体帝国のほかのパーツはしっかりしているのに最重要パーツがダメージを受けて、老化の進行や死を迎えるようになるのです。
また、肌への血流が低下し、皮膚の代謝が低下し、老化が進行するのです(図3)
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一酸化窒素ガスを合成するのは一酸化窒素ガス合成酵素(NOS)です。
NOSの合成を促進するにはミトコンドリアの活性化が必要です。
NOSには3種類存在し、血管の内皮細胞に存在するeNOS、リンパ球、好中球などの免疫担当細胞に存在するiNOS、そして神経細胞に存在するnNOSがあります。
eNOSは血管を拡張させて組織に栄養を補給するという非常に大事な作用を持っています。
iNOSは外から細菌やウィルスが進入したときに活性酸素と一酸化窒素を放出して、活性酸素とペルオキシナイトライトにより、細菌やウィルスをやっつけるのです。
活性酸素は多すぎると生体にダメージを与えるというマイナスのイメージがありますが、実は我々が生きていくためになくてはならない免疫を支えるものなのです。
nNOSは神経細胞に存在して、神経活動の活性化、学習意欲の亢進という作用を持っています(図4)

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皮膚に悪い細菌などが入り込むと、血管を流れている好中球が血管のそとに飛び出します。
この時血管が開くことが必要です。
そして飛び出した好中球が活性酸素とNOを放出して活性酸素、そしてペルオキシナイトライトにより細菌をやっつけるのです(図5)
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ここでもういちどいままでのことをおさらいしましょう。

副交感神経が優位になりアセチルコリンが放出されると血管でNOが作られ血管が開きます(図6)
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ところが活性酸素が血管内に存在すると血管の拡張が少なくなるだけでなく、ペルオキシナイトライトによる血管障害が生じます(図7)
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そして血管のなかにビタミンB群、C、Eなどが存在するとこれらの物質により活性酸素が消去されます。
またビタミンEは直接血管を拡張させるという作用も持っています。
その結果、より血管が拡張し、細胞に大量の栄養をあたえることが可能になるのです。
もちろん血管障害や酸化ストレスはなくなるのです(図8)
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ミトコンドリアはひとつの細胞に約2000個存在し、細胞にアデノシン3燐酸(ATP)という高エネルギー物質を供給する細胞の発電機です。
ミトコンドリアを活性化するのが、ビタミンCやB群です。
おいしいご飯やパンなど炭水化物が分解してできたピルビン酸がミトコンドリアに入るにはビタミンB1が必要です。
また脂肪酸がミトコンドリア内に入るにはカルニチンという物質が必要ですが、カルニチンはリジンというアミノ酸から作られますが、カルニチンの合成になくてはならないのが、ビタミンCなのです(図9)
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ビタミンCには活性酸素を消去する作用もあります。
また末梢血管の拡張作用を持つビタミンEを還元するという作用を持っています。
生体の細胞を活性化するには血管を拡張させて充分なエネルギーを与えることが必要なのです。
また血管をコントロールする神経は、ミトコンドリアのかたまりで、大量のビタミンCやB群を消費します。
ビタミンCやB群を投与することで神経も活性化するのです。
これらの結果をまとめます。

1)ビタミンCは血管を収縮させる活性酸素を消去する
2)ビタミンCは血管障害を起こすペルオキシナイトライトの発生を予防する
3)一酸化窒素(NO)は血管を拡張する
4)ビタミンCはNOを作る酵素(NOS)の活性を上げる
5)ビタミンCは血管拡張作用をもつビタミンEを還元する
6)ビタミンCは血管を支配する自律神経を活性化する

すなわちビタミンCは細胞帝国の将来を、血管ネットワーク強化で安泰にするのです。
そしてビタミンC静脈注射は肌を含む全身に効率よくビタミンCを伝達するのです。
ビタミンCの酸化を防ぐ作用を持つビタミンB群やアミノ酸を注射するいわゆるカクテル注射ではさらにその効果はアップします。

美肌とデトックス:ビタミンCはどうして肌にいいの?
それはビタミンCが血管を拡張し、神経、肌の細胞を活性化するからです。
老化に伴い代謝速度の低下(ミトコンドリアの活性低下)、活性酸素によるダメージの蓄積というふたつの現象が起こります。
ビタミンCは代謝を促進して活性酸素を消去するという、まさにアンチエイジング作用を持っています(図10)
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ビタミンCはいろいろな物質を還元します。
その結果ビタミンC自体が酸化してしまいます。
酸化したビタミンCを還元する作用を持つのが、ビタミンB2依存性の酵素やグルタチオンというペプチド(アミノ酸が3つ結合)依存性の酵素なのです。
ですからビタミンC以外にビタミンBやグルタチオンを一緒に摂ることがビタミンCの効果を高めるのです。
ビタミンCはシミクスミ、シワタルミ、敏感肌乾燥肌、ニキビ赤ら顔毛穴の開き、などの肌のトラブルすべてを改善します(図11)
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さらに異物除去代謝酵素P450の活性を上げたり、有害な金属を除去するキレーティングに使用するEDTAの活性を増強します。

そして私が個人的に体内の一番の毒素と考える活性酸素を消去するという、きわめて強力なデットクス作用を持つのです(図12)
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すなわち狭義の金属を除去するデトックス作用だけでなく、異物除去代謝を促進、活性酸素を消去するという広い意味でのデトックス作用を持つのです。
そして意外と知られていない事実ですがNOSはP450を還元するのです。
ですからビタミンCは直接P450の活性を上げるだけでなく、ミトコンドリアを活性化してNOSの活性を上げることによる間接的な作用によってもP450の活性を増加させて、デトックス作用を発揮するのです。
そしてビタミンCは免疫力はアップさせるけれども、免疫が暴走して起こるアレルギーを抑える、抗炎症作用もあるのです。
ですから長い眼でみると発癌の予防にもなります。

これらたくさんの作用を持つビタミンCを効率よく摂取するにはどうしたらいいのでしょうか?
食物中のビタミンCは摂取後3時間でピークに達して、6時間で半減するといわれています。
一方サプリメントで摂取した場合は1時間でピークに達し、3時間でもとに戻ります(図13)
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空腹時にサプリメントを摂取すると、吸収はさらに早くなります。ですからビタミンCをうまくとるには食事とサプリメントの両方からとることが大切なのです。
そうすれば、即効性と遅効性の2種類がうまく組み合わさって、長い間高い血中濃度を維持するようになるのです。
そしてビタミンCを還元するビタミンB群やグルタチオンも一緒にとるようにしましょう。
どんなサプリメントを摂っても疲れが取れないという大勢の患者様に、わたしがサプリメントを処方すると、大部分の患者様がとても楽になったと笑顔を見せてくれます。
私もサプリメントを摂るようになって、毎日の疲れが激減しました。
大学時代、ビタミンCなどをまったくとらずに毎日ボロボロになるまで働いていました。
あの頃、ビタミンCを中心としたサプリメントをしっかりとっていたら、毎日の疲れをなく、頭の回転も良くなり、もっとたくさんの論文が書けたではと思う今日この頃です。