第23回

老化撲滅大作戦<その4> 韓国dysportセミナーに出席して ~dysportと外用剤レーザーの併用効果について~



本年5月25日、26日と韓国斎州島で開かれたディスポートのセミナーに参加しました。
ディスポートはボツリヌス菌が産生する成分で、筋肉と神経の伝達をブロックし、主に表情ジワの治療に使用されています。
成分が全く同じもので、会社が異なるものにボトックスがあります。
つい最近アメリカでは若返りの医薬品として認可を受けたのは、記憶に新しいところです。
残念ながら日本では筋肉のけいれん症などに、保険治療が認められていますが若返りの治療薬としてはまだ認められていません。

日本で唯一ディスポートの臨床テストを行っているのが、白金にある北里研究所病院の美容センターです。
美容センター所長の宇津木龍一先生は私の同級生ですが、彼から表情ジワには非常にいいよという声を聞き、早速青山ヒフ科クリニックの看護婦たちとともに、2001年9月に美容センターを訪れ、私と職員に実際に注射をしてもらい、使用方法を習いました。
最近私は額の横ジワと、眉間と縦ジワが気になっていたのですが、宇津木先生の注射の結果、シワは全く消失してしまいました。
それだけでなく、額が妙につやつやしてくるのに気がつきました。
私の患者さんたちも額にディスポートを注射すると肌がすべすべしてくるのです。
それだけでなく、ビタミンA、Cをたっぷり塗ったときと同じように両眼の外側がアップしてタレ眼が治ってくる方もいました。

私は、どうしてだろうと不思議に思っていました。

そんな時、青山ヒフ科クリニックで各種レーザーの使用方法や併設のエステでケミカルピーリングやイオン導入法を学び、
ソウルで青山ヒフ科クリニック関連施設として“信クリニック”を2001年9月に開業した、金志恩先生(図1)のプレスパーティーに11月に招待されました。
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青山ヒフ科クリニックの現状やその成果をスピーチしてきました。
当日は大勢の韓国の雑誌社や、芸能人の方が出席していました。
翌日ソウル市内を金ご夫妻に観光案内してもらいました。
韓国ではすでにディスポートが何年も前に認可されていて、いろいろな使用法があるというのです。
日本では筋肉に注射しますが、韓国では皮膚に浅く注射する方法があるというのです。
そうすると、顔のリフトアップが可能であるというのです。
皮脂の分泌が抑えられるので、毛穴の開きもなおるというのです。

私はどうしてそうなるの?と質問しました。
そのメカニズムはまだよくわからないが、顔のベクトルの方向が変わるのではという説明を受けました。
私はその話を聞いて、ひらめきました。
“ディスポートはひょっとしたらビタミンA,Cと同じように、皮膚のコラーゲンやエラスチンを増加させる作用があるのでは”ということです。

その結果はすでに青山ヒフ科クリニックのホームページ老化撲滅大作戦その3に掲載されています。
額に筋肉だけに入れると、額が下がってしまい、まぶたが重くなるという副作用が出ます。
私はこれを避けるために筋肉には表情の動きに応じて、なるべく筋肉には少量を入れるようにしてあとはシワに沿って皮膚に浅く入れるという方法をとりました。
その結果まぶたが重くなるという副作用の出現はずっと低下しました。
これらの方法を編み出すことができたのも、金志恩先生のおかげです。

金先生には心の底から感謝しています。
さて冒頭の話に戻りますが、ディスポートのセミナーは韓国でのディスポートの代理店が主催するものでした。
だれでも参加できるわけでなく、ディスポートを大量に使用しているごく一部のドクターだけが参加を許されるというものでした。
私が参加することができたのは、金志恩先生とその恩師の同じく金善珉先生が強力に私を推薦してくれたおかげです。

さて日本ではセミナーというと昼間から始まり、夕方に終了し、そして後はお酒を飲みながらの懇親会ということになります。
しかしながらお酒抜きのガーデンパーティーが始まったのが、夜の7時。
そして8時からセミナーが始まりました。
そのすべてがディスポートの症例報告で、座長の金先生がそれをコメントしていくというものでした。
参加したドクターは美容形成や美容皮膚科のドクターですが、ディスポートがさまざまな使用方法をされているのには本当にびっくりしました。
なんと首のシワが取れるだけでなく、足首も細くできる。
さらにはあごのエラも取れる、鼻も高くできるという驚きの症例の連続でした。
金志恩も首のシワの治療例と、ふくらはぎから足首を細くした症例を発表されました。(図2,3,4,5)
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そしてセミナーが終わったのが、なんと午前1時30分でした!!!
とても日本では考えられない時間です。
一番驚いたのは、顔にディスポートを注射しすぎてよく笑えないという患者さんが金志恩先生の恩師の金善珉先生がディスポートと解毒剤を注射するとあっという間に笑えるようになったのには感動しました。

金先生のところには1日300人の患者さんが通院していて、韓国にはディスポートのカリスマドクターとして非常に有名な先生です。
彼のデモンストレーションでの注射さばきの速さと鮮やかさには、本当に感嘆しました。
“すごい”の一言でした。
私の実験結果はすでに金志恩先生にはお伝えしています。
その作用はディスポートを産生してるIpsen社の説明では、背中の筋肉の緊張が緩んで、その結果皮膚の血流がよくなって、コラーゲンなどが増加したのではというものでした。
私はそれだけでは、たった3週間で劇的に皮膚が若返った事実を説明するには不十分と思っています。
現在、皮膚の細胞にディスポートを添加して培養して、ディスポートの培養細胞に対する効果を計画中です。
ディスポートのメカニズムは筋肉と神経の伝達をブロックするという点が明らかになっています。
ディスポートの新しいメカニズムが明らかになることで、新たな使用方法が開発される可能性があるのではと期待に胸をわくわくさせています。
私なりのディスポートの解毒剤もすでに開発しました。
これは解毒剤を筋肉に注射して、そのあとに低出力アレキサンドライトレーザーを照射するというものです。
筋肉はカルシウムの存在下にアデノシン3リン酸(ATP)という高エネルギー物質が分解されて、収縮します。
実はATPを爆発的に増加させるのが、低出力レーザーなのです。
ディスポートはカルシウムの存在下における、神経からのアセチルコリンの分泌を低下させることで、神経から筋肉への収縮指令をブロックしているのです。ディスポートによって筋肉が動きにくくなっていても、大量のATP、アセチルコリン、そしてカルシウムがあれば筋肉は動きやすくなるのです。
また神経からのアセチルコリンの分泌を促進するのがビタミンCです。
そしてビタミンCはインシュリン同様に細胞にとって一番利用しやすいエネルギーであるグルコースを細胞のなかに入りやすくするという作用をもっています。

天然型のビタミンCではpHも5以下で濃度をあげるに従い毒性を発揮します。
しかしながらマグネシウム結合型のエステル型のビタミンC誘導体(VC-PMG)なら大丈夫です。
もう賢い読者の方なら、気がついたと思います。
筋肉ではなく皮膚に浅くディスポートを注射することで筋肉の麻痺を併発することなく強力な皮膚の若返りが可能です。

それでも少し笑いにくい、あるいはまぶたが重いという方には低出力レーザーを照射し、アセチルコリン、グルコース、そしてVC-PMGを筋肉注射するのです。
そうするとあっという間に、筋肉が動きやすくなります。
私が考えた解毒剤の処方も金志恩先生には伝えてあります。
もちろん金志恩先生も独自の解毒剤をすでに持っています。

さて私は皮膚科医です。
私が目指すものは手術をしないで、どれだけより美しい皮膚が実現できるかというものです。
私の武器はオリジナルの外用剤、低出力アレキサンドライトレーザー、そしてディスポートです。
これらを組み合わせるとどれくらい顔が変化するのでしょうか?
アトピー性皮膚炎の方が眼の下の色素沈着と血管の拡張による八の字型のクマを気にして来院されました。

外用剤(ビタミンC、レチノール)、眼の回りの低出力レーザー、額へのディスポートの使用でわずか2週間後にはクマもほとんど消失し、フェイスラインもシャープとなり、両方の眼もキリっとしました(図6a)
さらにこの日に顔全体に低出力レーザーを照射しました。
1週間後にはさらにクマが消失しています(図6b)
そしてこの日に眼の周りから頬にかけて浅くディスポートを注射しました。
さらに1週間後にはまるで別人のように顔全体がシャープとなり、クマもほぼ消失しています(図6c)
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この方の場合顔の筋肉が動かしにくいという症状は全く出現しませんでした。
またディスポートを鼻の両側や基部にすると鼻は狭く、高くなります。
これはコラーゲンなどの増殖作用によるものです。
治療前に比べて、鼻が狭く、そして高くなっているのがお分かりいただけると思います。
また眼のうえの落ち込みも消失しています。
これらの写真はすべてメイクなしで撮影しました。
現在培養細胞を用いて、ディスポートの細胞に対する作用を検討中です。
またレーザーがどうしてこのような効果を発揮するかについては、次回ご説明します。

サッカーのワールドカップもいよいよ始まりました。
韓国と日本がともに手を携えて、ワールドカップを成功させようと協力しています。
医学の面でも韓国と日本が協力することにより、より多くの成果がたくさんの患者さんに還元されるのではと、感じている今日この頃です。