第10回

敏感肌、アトピー性皮膚炎に対するマグネシウムの効果



マグネシウムが乾燥肌の改善に効果があることはマグネシウムで乾燥肌が治りますに述べました。
乾燥肌や敏感肌の代表として、アトピー性皮膚炎があります。

私はアトピー性皮膚炎の患者さんに塩化マグネシウム入りの入浴剤を使用していただいたところ、約5割の患者さんで症状の改善がみられました。
また患者さんの家族の方がマグネシウム入りのお風呂に入ると、肌がスベスベになる、しもやけができない、冷え性が改善したという声がきかれました。

図1はアトピー性皮膚炎の方の入浴剤使用前です。
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ステロイド以外のいろいろな外用剤を使用しても肌が真っ赤になっています。
この方に約1ヶ月間塩化マグネシウムの入浴剤を使用したところ、かゆみや赤みは全く消失してしまいました(図2)

入浴中のマグネシウムの濃度はわずか0.005%です。
私はびっくりしていろいろ調べてみました。
私はマグネシウムの欠乏がアトピー性皮膚炎を引き起こす可能性を考え、アトピー性皮膚炎の患者さんの血液中のマグネシウムの濃度を測定すると同時に、塩化マグネシウムを内服してもらいました。
その結果、患者さんで血液中のマグネシウムの値が低い方はいませんでした。
またマグネシウムを内服しても全くアトピー性皮膚炎の改善はみられませんでした。

マグネシウムはよっぽどの不適切な食生活をしない限り、血液中には不足しないということもわかりました。
血液中に十分量のマグネシウムがあると、せっかくマグネシウムを内服しても皮膚には行かずに、すみやかに排泄されてしまうことも判明しました。
私はごく微量のマグネシウムが皮膚に欠乏するために、乾燥肌、敏感肌あるいはアトピー性皮膚炎が起こるのではと約5年間推定してきました。
ところが最近、日本の大手の化粧品会社が非常に興味深い発表をしました。
それは

1)実験的に作った乾燥肌では、皮膚のバリア機能が低下するが、皮膚のバリア機能の回復を塩化マグネシウム、塩化カルシウムが促進する
2)セロテープを何回も皮膚に貼っては剥がすことを繰り返して作った実験的敏感肌では、表皮上層にあったマグネシウム、そしてカルシウムが消失する

というものでした。

この報告はまさに私の推測を強力に支持するものでした。
すなわち一部の乾燥肌、敏感肌、そしてアトピー性皮膚炎の方では皮膚における微妙なマグネシウムやカルシウムの不足がおこっており、これを補正することで皮膚のバリア機能が改善するのです。
図3はアトピー性皮膚炎の方の真っ赤な病巣部です。
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バリア機能の維持に大切な働きをする角層がほぼ消失しています。
このような肌では水分がどんどん蒸発してしまい、極端な乾燥肌になってしまいます。
このような肌の方に化粧水や乳液をたっぷり塗ると何が起こるのでしょうか?みなさん想像がつきますね。
生きている細胞に直接界面活性剤を含む物質が接触するわけですから、激烈な痛み、かゆみ、ヒリツキが起きます。
これを敏感肌といいます。

私はどんな化粧品を使用してもひりついてしまうという、いわゆる敏感肌の方のメカニズムを説明します。
これらのほとんどは、本当にいろいろな物質に過敏反応、いわゆるアレルギー反応が起きているのではなく、いろいろな物質が一気に皮膚に進入する結果、細胞が生じる悲鳴が、かゆみやヒリツキとなってしまうのです。

このような方の場合どうしたらいいのでしょうか?

一番望ましい方法はまず化粧を数週間から数ヶ月中止し、皮膚のバリア機能の回復に務めることです。
極端な乾燥肌では皮膚が非常に敏感になっています。
皮膚を保湿して保護するような化粧水やワセリンのみを外用するようにしましょう。
そのようなことが不可能で、今日からでも化粧をしなくてはならないという場合にはどうしたらいいのでしょうか?

まず角層の欠損部に皮膚を保護する化粧水やワセリンを外用します。
この結果皮膚のバリア機能がある程度回復します。
その上から目的とするエッセンス、ビタミンA,Cなどを外用しメークをしましょう。
乾燥が強い場合にはさらにその上にワセリンや保湿クリームなどの保湿剤をもう一度外用してからメークをするのです。

ここまで読んできた皆さんはもうお分かりのことと思います。
実は乾燥肌と敏感肌とは表裏一体の関係なのです。
皮膚の表皮、特に角層や皮脂膜という皮膚の表面をカバーするラップに穴があいて、どんどん水分が失われていく状態が乾燥肌です。
そしていろいろな外用剤や化粧品が穴のあいたラップをどんどん通過して皮膚を刺激する状態が敏感肌なのです。
この状態が長く続くと、ちょっとした皮膚の刺激、たとえば下着がすれる、ストッキングを長くはいているだけで、ヒスタミンという皮膚のチクチクや痒みを起こす物質が放出されてしまうようになるのです。
これを易刺激性といいます。
この現象は実はサイクリックAMP(cAMP)という物質が不足することで肥満細胞という皮膚に存在する細胞よりヒスタミンが非常に放出しやすくなることで生じるのです。
最近マグネシウムが不足すると肥満細胞のcAMPが低下するというこが判明しました。
このメカニズムについてはあとで説明します。
乾燥肌、敏感肌を防ぐ第一歩は保湿を中心としたスキンケアです。
さて青山ヒフ科クリニックではL_アスコルビン酸リン酸マグネシウム塩という持続活性型ビタミンCを使用しています。
このビタミンCの最大の利点は皮膚のバリア機能を促進するマグネシウムを含んでいることです。
アトピー性皮膚炎の患者さんの色素沈着に対して、ビタミンCクリームと油溶性甘草クリームを処方しました。
その結果アトピー性皮膚炎用のステロイドを含まない外用剤よりもかゆみがなくなるという方が続出しました。
これら2つのクリームは美白作用だけでなく、共にアトピー性皮膚炎の際に、悪さをする活性酸素を消去する作用を持っています。
もう一つ大切なことはビタミンCクリームが皮膚のバリア機能を促進するマグネシウムを含んでいることです。

これらのメカニズムを図4に示します。
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マグネシウムとカルシウムはその科学的性質が似ているため、しばしば拮抗的に働きます。
細胞内のマグネシウムが低下するとカルシウムがマグネシウムの変わりに細胞内に進入します。
さて肥満細胞内のマグネシウムが実際に減少した場合を考えてみましょう。
cAMPを作るアデニレートシクラーゼの活性は低下し、細胞内に進入したカルシウムによりcAMPを分解する酵素、フォスフォディエステラーゼの活性は亢進します。その結果細胞の中のcAMPの減少がおこり、ヒスタミンを放出しやすい状態が起こります。これがアトピー性皮膚炎の容易刺激性をひき起こすのです。

最近皮膚のバリア機能の回復には、マグネシウムやカルシウムなどの各種イオンのバランスが大切な働きをすることが、明らかになってきました。
また精神的ストレスが活性酸素を生じさせるだけでなく、血液中からのマグネシウムやカルシウムの排出を促進することも最近明らかになりました。
血液中のマグネシウムやカルシウムが低下すると、ただちにそれを補正するために、骨と細胞内から血液中にマグネシウムの移動がそして骨から血液中にカルシウムの移動が起こります。
その結果、血液中のマグネシウムやカルシウムの濃度は正常に保たれるという報告がすでにあります。
その結果皮膚の各種の細胞のマグネシウム濃度の低下が生じます。
そしてこれらマグネシウムを供給した細部には、骨から供給されたカルシウムの一部が進入し、細胞は疲労状態となります。
その結果肥満細胞内のマグネシウムの低下とカルシウム濃度の上昇が起こり、同細胞よりヒスタミンが放出されて皮膚にかゆみを生じさせたり、表皮角化細胞の代謝が低下してバリア機能の回復やケガのあとの治りが遅くなることも判明してきました。
そしてこのような細胞内のマグネシウム濃度の低下とカルシウムの上昇は、全身的には肩こりや血圧上昇など、ストレスにより全身症状を引き起こします。
市場に搬送される途中でストレスで死亡する豚が問題になっていましたが、餌にマグネシウムを加えることにより、死亡率を下げることに成功したという報告もあります。

私にとって最大の先生は私を信頼して長い間通院してくれる患者さんです。
美白作用の強化を期待して使い初めたマグネシウム含有型ビタミンCが、シミだけでなくニキビ、赤ら顔、てかり、毛穴の開きだけでなく、そして乾燥肌にまで効果があることを教えてくれたのは、身をもって結果を示してくれた患者さんです。
これら大勢の患者さんの期待に答えるように、ミネラルバランスを考慮したスキンケアを工夫してゆきたいと思います。
そして、体がだるい、最近肩がこる、皮膚がかさついたり痒いなどの症状を感じたら、マグネシウムを食事だけでなく皮膚からも補充するようにしましょう。