第17回

ニキビ撲滅大作戦<その2> ニキビはなぜ起こる



ニキビ撲滅大作製<その1>ではビタミンCを徹底的に取ることがニキビ治療の最大のポイントであると解説しました。
私の患者さんは平均して1ヶ月で1個約30グラムのビタミンCクリームと70mlのローションを使用します。
仕事をしていない方では1ヶ月で8個使用する方もいます。
仕事をしていない方でも1ヶ月に4個使用している方がいます。

そのような方の肌は、常に真っ白になります。
その方の頬の写真をお見せします。
もちろん写真の露出は変えていませんし、患者さんはノーメイクです。
真っ赤だった皮膚が3ヶ月後には抜けるような白い肌になっています(図1,2)
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もちろん乾燥肌でもニキビができるという方もいます。
そのような場合は保湿剤を使用しながらビタミンCを使用することが大切です。
現在までのところニキビの発症メカニズムはまだ良くわかっていないのが現状です。
しかしながらニキビにアクネ菌が関与している報告など様々な研究が現在も精力的に医療機関や化粧品メーカーでなされています。
今回はなぜニキビができるのかを解説します。

皮脂は皮脂炎で作られて毛穴に沿って分泌し、皮膚の表面に皮脂膜を形成し、皮膚にうるおいを与えます。
皮脂線と毛穴の関係は水道のホースと蛇口の関係に例えることができます。
すなわち皮脂は皮脂腺という蛇口から毛穴というホースを伝わって皮膚の表面に分泌されるわけです。
水道の蛇口に極めてやわらかいホースをつないで、蛇口を一杯にひねるとホースの内圧が上がってホースがふくらんでくる、そしてホースの先端部を指で閉じてしまうとどんどんホースが風船のように膨らんでくることは、皆さんすぐ想像できると思います。

とても仕事が忙しいとか、とてもいやな同僚がいるなどのストレスは皮脂の分泌を増加させます。
青山ヒフ科クリニックには、20代以降の社会の第一線でバリバリ働いている方がたくさん来院します。
これらの方は学生時代は何ともなかったけれども、あるいはホンの少ししかできなかったのだけれど、就職してからニキビが増えたという方がほとんどです。
やはり働くということは非常に強いストレスになるのでしょう。

また働きながら、結婚するとより悪化する方もいます。
これらの方は自分ではあまり結婚生活のストレスは感じないと言います。
しかしながら今までは仕事が終わってしまうと、全部自分の時間でした。
お家に早く帰ってのんびりしてもいいし、友達と出かけるのも自由です。
でも結婚してからは、昼の仕事が終わったあと今度は妻としてあるいは主婦としての時間が始まります。
これらの患者さんに自分の時間がなくなったというストレスを感じませんかと質問します。
ほとんどの方は、ああそういわれてみればそうですねと答えます。

皮膚は心の鏡です。
自分が感じていなかったストレスも赤ら顔、毛穴の開きそしてニキビとして心のストレスを写してしまいます。
そして20代以降の患者さんのニキビは頬の下部から首の部分いわゆるUゾーンにできるのが特徴です。
ストレスがあると我々は副腎皮質ホルモンという、ストレスをやっつけるホルモンが分泌されます。
副腎皮質ホルモン自体が皮脂の分泌の促進作用を持っていますが、ストレスは黄体ホルモンの分泌をも促進します。
このホルモンは排卵から生理の間に分泌されますが、男性ホルモン作用を持っています。
生理前にニキビが悪化するのはこのホルモンのしわざです。
皮脂の分泌を促進するだけでなく、毛穴の出口にある角層の厚みを増してしまい皮脂を詰まりやすくさせてしまいます。
男性ホルモンは皮脂の分泌を促進する以外に、ヒゲをはやすという作用を持っています。
男性でヒゲのはえやすい部位は、女性のUゾーンと同じです。
最近ニキビだけでなく、あごや唇の上に長い毛が何本かはえてきたという方がいました。
この方の毛はうぶ毛ではなく、立派にひげといえるものでした。
図3はニキビの女性の口ひげです。
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私は男性だけでなく、女性でもUゾーンの皮脂腺は男性ホルモンに反応しやすいのではと考えています。
さてこのように皮脂の分泌が増加すると、毛穴というホースに皮脂がたまります。
このような皮脂はワックスエステルというギラギラの油で詰まりやすい性質を持っています。
我々の表皮のケラチノサイトという細胞はリパーゼという皮脂を分泌する酵素を分泌することは知られています。
ケラチノサイトの親戚の細胞である、毛穴の細胞も恐らく持っていることでしょう。
毛穴に皮脂が詰まると、毛穴が詰まっては大変と毛穴の細胞がリパーゼをドンドン分泌することが想像されます。
また皮脂がたまると、それをえさとして繁殖する好気性の常在細菌やアクネ菌もどんどん増えます。
これらの細菌もリパーゼをドンドン分泌します。
その結果皮脂は遊離脂肪酸に分解され、毛穴は詰まらずにすみます。
しかしながらこの遊離脂肪酸は皮膚に塗ったり、注射をすると、血液中を流れている好中球という本来悪い細菌をやっつける細胞をドンドン皮膚に集めて活性化させるという報告があります。
好中球が活性化されると活性酸素やフリーラジカルという物質が放出されて、周囲を酸化させてしまいます。
それが穏やかに起こった状態が赤ら顔や毛穴の開いたオイリースキンで、もっとはげしくなったのがニキビなのです。
炎症がとても激しい場合には、クレータも生じてしまいます。
これらの細菌は毛穴の細胞を破壊してしまうケラチナ―ゼなどの酵素も分泌します。
そうすると毛穴から皮脂が漏れてきます。
この漏れた皮脂に活性酸素やフリーラジカルが作用して、過酸化脂質という物質が生じます。
過酸化脂質は活性酸素よりも寿命が長く、周りの物質をじっくりじわじわと酸化して、炎症を起こします。

そしてニキビの症状の悪化がさらにストレスを生み出します。
これらの関係を図4に示します。さてこのようなニキビの症状は毛穴に一致した、赤いぶつぶつでやがてその頂点に白い膿が出てきます。
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このような症状は毛穴に細菌が入り込んでそこで増殖して痛みをおこす、おできあるいはもっと浅いところで細菌が増殖する、毛のう炎という感染症の症状によく似ています。
おできや毛のう炎の膿からは原因となった細菌が通常検出されます。
しかしながら、最近約30例のニキビの患者さんの膿あるいは、皮脂が固まったコメドより、一般細菌を検出する好気性培養や、アクネ菌を検出する嫌気性培養をしても半分以上の方からは、細菌は検出されませんでした。
検出されてもその量は極めてわずかでした。
これは何を意味するのでしょうか?恐らくニキビの毛穴にいる細菌はいてもごく少量で、あまりそこで増殖していないのでしょう。

だから好中球の活性酸素に殺されてしまいほとんどの例で検出されないのでしょう。
もしこれらの細菌がおできなどの感染症と同様にたくさんいるのであれば、ほとんどの例で細菌が検出されるはずです。
感染症は抗生物質を投与すれば簡単に直ります。
しかしながらニキビは物質を投与してもある程度は直りますが、完全には直りません。
大部分の毛穴は開いたままですし、赤ら顔も残ってしまいます。
なぜでしょうか?抗生物質を投与して細菌がいなくなっても、毛穴の細胞由来のリパーゼが皮脂を分解して、その結果炎症を起こす活性酸素などが生じてしまうからと私は想像しています。
ニキビにとって細菌は像悪因子ではあるけれども、必須因子ではないのでしょう。
ニキビは純粋な意味の感染症ではなく、皮脂の過剰分泌を背景としてそこに細菌が像悪因子として関与する活性酸素病なのです。