第26回

ストレスと皮膚症状について ~ストレスはニキビ、シミ、タルミ、乾燥肌を促進する!~



ストレス、最近よく耳にする言葉です。
しかしながら私たちが何気なく使っている言葉ですが、ではストレスっていったい何なのと聞かれると、答えに困ってしまいます。
有名な学者であるセリエは、元来“ゆがみ"を意味する工学用語であるストレスと言う言葉を用いました。
彼は生体にゆがみを生じるものをストレッサーとし、これに対する生体の防御反応を合わせてストレスないしストレス状態と定義しました。

最近は刺激であるストレッサーも防御反応もストレスという言葉で表現されるようになりました。
国際化、情報化の波に乗り、忙しい毎日を送っている我々は毎日ストレス状態になっているといえるでしょう。
さてこのようなストレスをキャノンは

1)物理的なもの{寒さ、暑さ。騒音}
2)化学的なもの{酸素欠乏、飢餓}
3)生物学的なもの{細菌感染、毒素}
4)精神的なもの{拘束、試験、疼痛}

に大別しました。

青山ヒフ科クリニックを受診する患者さんで一番多い悩みは、ニキビ、赤ら顔、毛穴の開きです。
これらの患者さんのほとんどの方は、学生時代はなんともなかった、あるいは少ししかでなかったけど、就職したらたくさんニキビができたといいます。やはり社会にでてバリバリ働くということは、大変なことなのです。
風邪をひいているのに(生物学的ストレス)、寒いお店で(物理的ストレス)、おなかがすいているのに我慢して(化学的ストレス)、いやな上司と一緒にイライラしているのに顔には笑みを浮かべながら(精神的ストレス)、一所懸命ものを売る、あるいは営業はするということは誰でも経験するようなことです。
仕事というものをじっくり考えると、このようにストレスだらけなのです。

このように一日働いても、帰宅するとのんびりできます。
あるいは友人と遊びにいくこともできます。
これらの行為はストレスを発散するためにとても大切です。
しかしながら結婚するとそうは行きません。
帰宅後は“主婦業"という仕事の始まりです。
ご主人の帰りの前に夕食の支度をして、掃除もしなければなりません。
そして子供ができるともっと大変です。
昼間の仕事、主婦業、子育てで自分の時間が全くなくなってしまいます。

先日20代の方が受診されました。
最近顔が垂れて来て、太ももが痒くなってきたというのです。
その方は大変顔立ちはきれいなのですが、全くハツラツとしたところがなく、いわゆるやつれはてた状態でした。
よく話を聞いてみると、その方は看護婦さんで、朝から夕方まで病院で患者さんに神経を使いながら働いて、その後託児所に預けた子供を引き取ってして、主婦業をするというのです。
ご主人は毎日帰宅が遅いので、深夜までご主人の帰りを待つ毎日とのことでした。
つい先日は夜遅く、寝ている子供の顔を見ていたら私の人生は何なのだろうと涙が止まらなかったそうです。

さてストレスがニキビを引き起こすことは最近よく知られてきました。
では、ほんの数年前までとてもかわいい人がやつれはてて老け込んで、乾燥肌やタルミを引き起こすのはどうしてなのでしょうか?
私はこれもストレスによるものと考えて、たくさんの本を読みました。
その中で大変興味深い事実が明らかとなってきました。

その結果はストレスがあることにより、
1)ニキビ、赤ら顔、毛穴の開き
2)敏感肌、乾燥肌
3)シワ、タルミ
4)シミ、くすみ
という女性の肌の悩みのすべてが出現するというきわめて衝撃的な事実なのです。

ストレスが加わるとそれに対応するために、我々の体のなかではいろいろなホルモンが分泌されます。
これらのながれを図1に示します。
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多忙イライラなどのストレスが加わると、自立神経(交感神経系)でノルアドレナリンが、最終的には副腎髄質でアドレナリンとノルアドレナリンが分泌されます。
これらのホルモンは血流を増加させ、いろいろな臓器の代謝を促進します。
そうです、皮膚では汗や皮脂(3/7)の分泌が促進されるのです。
また視床下部からはCRH(corticotropinreleasinghormone)というホルモンが分泌され下垂体に働いて、ACTHというホルモンが分泌されます。
ACTHは副腎皮質に働いて、コルチゾール(ステロイド)を分泌させます。
コルチゾールはストレスに対応するホルモンとしてよく知られています。
皮膚に作用して皮脂の分泌を増加させます。
また副腎からは男性ホルモンであるアンドロゲンを分泌させます。
アンドロゲンも皮膚に作用して皮脂の分泌を作用させます。
これらのホルモンのすべてが皮脂の分泌作用を持っているわけです。
これは寒いところで働くヒトの露出した皮膚を保護する作用をもっているわけです。
すなわち寒いところでイライラしながら働くという究極の極限状態に対応するのに非常に都合がいいことになります。
しかしながら、その作用が過剰になると毛穴の詰まりや開き、ニキビを引き起こしてしまいます。
男性と女性の肌の一番の違いは皮脂の分泌の量です。
男性はもともと男性ホルモンが多い種族です。
これは大昔、寒い戸外で狩りをしてきたことに対応した結果です。
皮脂の分泌は男性では50代になってやっと低下してきます。
一方女性はこれまでは10代後半から20代の前半が皮脂分泌のピークで、その後はどんどん皮脂の分泌が低下するといわれてきました。
しかしながら戸外で、ときには寒い戸外で働くためには、皮膚を保護するために皮脂の分泌が増加する必要があるのです。
ですからアンドロゲンやコルチゾールやア3/7寒い戸外で働くためには、皮膚を保護するために皮脂の分泌が増加する必要があるのです。
アンドロゲンやコルチゾールやアドレナリンの分泌が増加して皮脂の分泌が盛んになり、ひげも濃くなった女性は、忙しい現代社会で、男性に負けないで働くために完全に適応した状態、すなわち戦闘態勢にはいっているのです。
しかしながら皮脂の排出路である毛穴の大きさは男性より女性のほうがはるかに狭いのです。
また男性はお化粧をしませんが女性はお化粧をしなくてはなりません。
すなわち毛穴の出口が詰まりやすくなっているのです。
ですから同じストレスにさらされている男性に比べて、はるかにニキビができやすいということになってしまうのです。
このように常にストレスにさらされている状態では、アンドロゲン、アドレナリン、コルチゾールなどのホルモンの分泌が常に増加して、毛穴が開きます。
そして排卵から生理の間に黄体ホルモン(プロゲステロン)が増加します。
このホルモンは男性ホルモンを持ち、皮脂の分泌の促進作用を持っています。
ですから生理前になるとニキビができやすくなるのです(図2)
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またコルチゾールは老化を防止して皮膚のハリやキメの維持に大事な働きをするコラーゲンやエラスチンの合成を抑えて大事な働きをするコラーゲンやエラスチンの合成を抑えてしまいます。
またコラーゲンと並んで水分の維持に必要なヒアルロン酸の合成を抑えてしまいます。
その結果、シワ、タルミ、乾燥肌が出現します。
またこれらのホルモンの合成や分泌に必要なのがビタミンCです。
ですからストレスがあるなと自分が感じたら1日最低2グラムのビタミンCをとるべきでしょう。

さてストレスに対応したアドレナリンやノルアドレナリンは皮膚や内臓の代謝を促進します。
その結果活性酸素をたくさん生じるようになります。
皮膚や内臓を錆付かせる作用のある活性酸素を消去する代表選手がビタミンCです。
しかしながらいろいろなホルモンの合成に必要なビタミンCは不足しています。
ではどうしたらいいのでしょうか?

メラニンが増加すればいいのです。
メラニンはコスメティックな面からはシミやクスミの原因として眼のカタキとされています。
しかしながらメラニンには紫外線を防ぐサンスクリーン作用以外に、活性酸素を取り込んで無毒化するという非常に大事な作用があるのです。
ニキビの跡や化粧品かぶれで皮膚が黒くなるのも、生じた活性酸素を取り込んで無毒化するためにメラニンが増加した結果なのです。全身のメラニンを増加させるのにはどうしたらいいのでしょうか?
答えはメラニンを増加させるホルモンが増加すればいいのです。
そのような作用をもっているホルモンが実はACTHやMSHなのです。
これらのホルモンの作用により、生体にダメージを与える活性酸素は消去されて、めでたし、めでたしと一件落着するのですが、その後はくすんだ肌が残るわけです。我々の体の中では活性酸素という発ガン作用を持ち、細胞やコラーゲンを破壊する活性酸素を消去することが、今そこにある危機を取り除くために必要なことなのです。
また寒冷などのストレスにさらされると血液中からマグネシウムは尿中に排出されてしまいます。
すると血液中のマグネシウム不足を補うために、皮膚の細胞からマグネシウムが血液中に移動します。
そして肌のマグネシウムを補正するために、骨からマグネシウムだけでなく、カルシウムも動因されます。
カルシウムは一部のマグネシウムの代わりに細胞内に入り込みます。
その結果肌や全身の細胞は疲労状態になってしまうのです。
マグネシウムはATPという高エネルギー物質を分解する酵素ATPaseになくてはならないものです。
この酵素がないと皮膚の表皮細胞の増殖や分化がうまくいかなくなります。
その結果、バリア機能に維持に必要な角層がちゃんと作られなくなります。
また皮膚のかゆみや肌荒れの原因になるヒスタミンやアラキドン酸などの物質もどんどん生じます。
その結果ますます敏感肌や乾燥肌がひどくなるわけです。
マグネシウムの皮膚に対する作用については、ホームページのマグネシウムと敏感肌、乾燥肌の項目を参照してください。
また角層のバリア機能の維持には角質細胞間脂質であるセラミドが大切な働きをします。
セラミドは遊離脂肪酸から表皮細胞内で合成されます。
遊離脂肪酸が細胞内に入りこむにはカルニチンという物質が必要です。
カルニチンの合成には実はビタミンCが必要なのです。

そうです、ビタミンCが不足することにより遊離脂肪酸がスムーズに皮膚の細胞に入ることができずセラミドが不足し、ここでも敏感肌、乾燥肌が像悪するのです。
ビタミンCを1日2グラムから3グラムとることにより、糖尿病の方の血糖値が低下するという報告があります。
これは一番利用しやすい栄養素である血液中の糖分がスムーズに細胞内に入り込むためです。
またビタミンCは蛋白質やアミノ酸の代謝にも密接に関連しています。
ビタミンCは、美白作用、コラーゲンの合成促進作用、皮脂の分泌抑制と活性酸素の消去によるニキビ赤ら顔の改善作用があることはよく知られています。
しかしながらビタミンCは実は乾燥肌、敏感肌の改善作用をも併せ持つのです。
そしてビタミンCの一番の作用を要約すると、スムーズに栄養素を細胞の中に入れるということになるのです。
そして細胞の代謝を円滑にするのがマグネシウムであり、生じた活性酸素を消去するのがビタミンCなのです。
ですからストレスがあるとただちに不足するのがビタミンCとマグネシウムなのです。
そして私は生体にとって最大のストレスは細胞の飢餓と考えます。疲れているときにアセロラなどのビタミンC飲料を飲むと疲れが、すーと、取れます。頭も一気にさえ、肩こりも低下し、手足がぽかぽかしてきます。
これはアセロラ中のビタミンC、マグネシウムそして含まれているカロリーの複合作用によるものなのです。
ですからストレス状態を一気に解消するのであれば、ビタミンCやマグネシウムなどとカロリーをとればいいことになります。
そうすればただちに細胞内にエネルギーが供給されストレスが緩和するのです。
では長期的にストレスを長期的に克服するにはどうしたらいいのでしょうか?

一番簡単な方法は仕事をやめてしまうことです。
それができないから皆さん苦労するのです。
答えは適度な運動と自分の好きな音楽を聴くことです。
また運動すると代謝が増加するので運動の前後にビタミンCをたっぷり含んだ黄色緑野菜や野菜ジュースを飲むようにしましょう。
運動すると元気になり、爽快な気分になることはよく知られている事実です。
私も毎朝した後は快適な気分になります。
このとき脳内麻薬であるエンドルフィンが増加することが最近明らかになりました。
それ以外、なぜ運動後に爽快な気分になるのかは、まだ不明です。

しかしながら私は、
1)運動の最中になにも考えないこと
2)運動後に代謝が促進してすみやかに栄養素が血流に乗って、隅々の細胞に運ばれ
3)老廃物が排出される
これら3つの理由で運動後に爽快になるのではと推測しています。

我々の祖先はその昔、野原を駆け回っていました。
楽しい時には、きっと木の枝で幹をたたきながら踊ったりもしたのでしょう。
私たちも子供のころ、みんなで走りながら遊びました。
運動をするということ、音楽を聴くという行為は我々の本能を活性化するのだと思います。
社会が発達して、運動する時間もなく、長時間拘束されて、過酷な環境で仕事をする。
それが私たちが進化の代償の結果、支払わなければいけないもの、ストレスなのです。
また運動後にゆっくり入浴することも大切です。
私はラベンダーをはじめとする、6種類のバスエッセンスと、マグネシウム入りの入浴剤をいれて、大好きなキースジャレットを聞きながら、毎日ボーっとしながら入浴します。
1996年の東京公演のNeverletmegoは最高です。
ラベンダーの香りに包まれて、いつの間にか私は、キースという音の世界をただようシャボン玉になってしまうのです。
お風呂で大事なことは、なにも考えずにボケーと過ごすことです。
そうすると副交感神経が優位になるのです。

入浴時に本を読むなんてことはやめましょう。
交感神経が興奮してしまいます。
お風呂のあとに飲むアセロラージュースと丸かじりするレモンのうまさはたとえようがないほどです。
今日も一日頑張るぞという爽快な気分で一日の診療に臨むことができるのです。
ストレスの対応についての詳細はホームページ老化撲滅大作戦その1をごらんください。
ストレスにより増加するアドレナリンやノルアドレナリン、コルチゾール、アンドロゲン、MSHなどすべてのホルモンが免疫抑制作用をもっています。

ストレスは老化を促進させます。
ストレスをうまく消去すること、これが現代社会を生きるこつだと思います。