第25回

ジェネシスで肌がリフトアップ



Qスイッチアレキサンドライトレーザーを低出力で照射することにより、ミトコンドリアの活性化が起こり、皮膚の若返りが可能であることはすでに老化撲滅大作戦その5で報告しました。
アレキサンドライトレーザーを低出力で顔全体からフェイスラインに照射すると、たった3日であごの下のタルミはとれ、眼の下のクマや頬のたるみもなくなり、目元もくっきりとなります(図1~4)
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この方の場合照射後の写真はメイクアップをしています。
通常レーザーの効果の持続時間は1,2ヶ月ですが、この方の場合レーザーの効果は3ヶ月以上持続しました。
老化撲滅大作戦その5で述べたように、私の皮膚にアレキサンドライトレーザーを照射するとエラスチンと表皮細胞の増加が起こりました。

そして臨床実験ではコラーゲンや表皮細胞の破壊の所見を伴わずに、表皮細胞、繊維芽細胞と思われる細胞の数の増加、コラーゲンやエラスチンの著明な増加が認められました。
これらの所見は、もしレーザーがメラニンに邪魔されないのであれば、ターゲットとなるミトコンドリアをより強く活性化することが可能であることを強力に示唆しています。
波長をアレキサンドライトレーザーより長い方向に持っていくことにより、メラニンに対する反応性は低下します。
しかしながらヘモグロビンやミトコンドリアに対する反応性は増加するのです(図5)
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もし私の説が正しいのであれば、波長が755nmのアレキサンドライトレーザーよりも1064nmのヤグレーザーの方がより強い若返り作用を発揮するはずです。
そこで私は顔の片側、写真の左側にアレキサンドライトレーザー、右側にヤグレーザーを顔から頚部にかけて同じショット数照射しました。
照射後36時間の所見では両側とも著明にリフトアップしています(図6,7)
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この時点ではコラーゲンやエラスチンの増殖はほとんど起こっていないはずです。
このリフトアップ効果は筋肉の収縮によるものです。
そしてノーメイクで撮影した照射1週間後の所見では左右とも頬がビシっと引き締まっています(図8)
また眼の下のクマもほとんど消失し、照射前にあった頬を八の字に走る垂れジワもなくなっています。
これはコラーゲンやエラスチンの増加によるものです。
これらの所見よりアレキサンドライトレーザーもヤグレーザーも蛋白や細胞の増殖による顔の引き締め効果を発揮することが明らかになりました。

この効果は約1ヶ月は持続します。

もちろんビタミンA,Cの外用は一切行っていません。(図9)
1ヶ月後に顔からフェイスラインにかけてヤグレーザーを照射し、今度はビタミンA,Cの外用を併用しました。
1ヵ月後でもさらにきれいなフェイスラインが維持されています(図10)
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36時間後の写真のみメイクアップをしていますがそれ以外の写真はメイクをしていません。
これらの結果は老化撲滅大作戦その5で述べたように、レーザーを照射するだけでなく、ビタミンA,Cの外用を併用したほうが、表皮細胞の増殖が増加するという所見に一致します。
すなわち、レーザーでミトコンドリアを活性化して、ビタミンA,Cがスムーズに細胞内に栄養を補給するという協調作用により、リフトアップが増強したのです。
もちろんビタミンA,Cそのものにも代謝促進作用があります。
私はいろいろな方にアレキサンドライトレーザーとヤグレーザーを片方ずつ照射してみました。
その結果、色の白いヒトではどちらも有効であるという結果が出ました。
今まで、色の黒い方にアレキサンドライトレーザーで照射をする場合には、出力を十分に落として炎症性の色素沈着を起こさない様に、慎重にする必要がありました。

しかしながらヤグレーザーではメラニンに対する反応性が低いので、出力を落とすことなく気楽に照射することが可能となったのです。
レーザーで一番大切なことはどれほどのエネルギーを皮膚に与えるかと言うことです。
1ショットあたり皮膚に与えることのエネルギーの総量はエネルギー密度という言葉で表現されます。
エネルギー密度の単位はJ/cm2です。
そして、エネルギー密度は、単位時間あたりに照射されるエネルギー(これをパワー密度といいます単位はW/cm2) ×照射時間で表すことができます。
すなわち、エネルギー密度(J/cm2)= パワー密度(W/cm2) ×照射時間(秒)という計算式が成り立ちます。
Qスイッチアレキサンドライトレーザーの照射時間 は50ナノセック(nano sec) すなわち1億分の5秒という非常に短いものです。
これはこのレーザーがもともとシミをとるために開発されたためです。
すなわちアレキサンドライトレーザーの光はメラニンを多く持っているシミを破壊する作用が必要です。
しかしながら我々のシミでない正常皮膚にもメラニンは存在します。

照射時間が長いと、正常皮膚も破壊してしまう可能性が増加します。
ですから照射時間は非常に短い必要がるわけです。
私はQスイッチアレキサンドライトレーザーのレーザーのエネルギー密度は設定できる最低の 3J/cm2として使用しています。
一方ヤグレーザー(クールグライドバンテイジ Coolglide Vantage)の照射時間は 0.1ミリセック(msec) すなわち1万分の1秒と設定しました。
そしてエネルギー密度は15J/cm2としました。
このように照射時間を長く設定できるのは、メラニンに対する反応性が低いからです。
ヤグレーザーの1ショットあたりのエネルギー密度はアレキサンドライトレーザーの3J/cm2から15J/cm2と5倍になっています。
ヤグレーザーの照射時間はアレキサンドライトレーザーの1億分の5秒から1万分の1秒と2000倍になっています。
したがって単位時間に皮膚に照射される光子(フォトン)の量、すなわちパワー密度は1/2000 X 5 = 1/400となることが計算式で求めることができます。
すなわちヤグレーザーでは単位時間に皮膚に注ぐ光の量はアレキサンドライトレーザー400分の1になったのです。
ちょっと難しい話ですが、ここが大変重要なポイントです。
すなわち実際にレーザを照射する場合、エネルギーの総量が同じであるのであれば、照射時間の長いレーザーほど、単位時間に照射されるレーザーの光子(フォトン)は低下するということです。

アレキサンドライトレーザーを照射する場合、1ショットごとにゴムを弾くようなパチンという衝撃があります。
これは大量の光子が皮膚にあたる際に生じる衝撃波なのです。
ヤグレーザーでは単位時間に照射される光の量は400分の1になったため、パチンという衝撃波はなくなったのです。
他に時間あたりの光の量が400分の1になった分、照射時間を2000倍と長くすることでトータルの1ショットあたりのエネルギー密度はアレキサンドライトレーザーの5倍とすることが可能となりました。

これらの結果は様々な利益を患者さんにもたらします。
いままでのアレキサンドライトレーザーでは、パチンという痛みを防ぐために、麻酔のクリームを塗って20分から30分待ってもらう必要がありました。
しかしながらヤグレーザーでは少し温かみを感じるだけで、痛みは全くありません。
また照射後にアレキサンドライトレーザー ではやや赤くなった皮膚に非ステロイドの抗炎症剤を塗り、20分から30分冷やす必要がありました。
しかしながらヤグレーザーでは照射後に皮膚はほとんど赤くならず、照射後の冷却の必要もありません。
両方のレーザーとも照射時にはフォトフェイシャルや一部のダイレーザーのように冷却ジェルや冷却ガスを必要としません。

しかしながらアレキサンドライトレーザーの場合は麻酔と冷却が必要なため、青山ヒフ科クリニックでは予約制となっていました。
ところがヤグレーザーでは麻酔も冷却も必要ないため、1日何人でも照射することが可能となりました。
このヤグレーザーの利点は波長が長いのでメラニンへの吸収率が低く、アレキサンドライトレーザーほどメラニンに邪魔されずに、細胞の発電機であるミトコンドリアを確実に活性化できることです。
したがって色の黒い方でも大丈夫です。
アレキサンドライトレーザーでは1秒間に5ショットの照射数でしたが、ヤグレーザーでは1秒間に7ショット可能です。
これは照射範囲が広い場合では大きな照射時間の差になります。
ミトコンドリアは細胞の細胞質に2000個ほど存在します。
ミトコンドリアのDNAは細胞の核に存在するDNAとは全く異なっています。
太古の昔、数十億年前、光合成をする細菌が真核細胞に取り込まれて、植物のなかで進化したのが、光合成をする葉緑体と言われています。
また好気性細菌が真核細胞に取り込まれて、動物のなかで進化したのが、ミトコンドリアといわれています。
すなわち動物のミトコンドリアの相似体が植物の葉緑体なのです(図11)
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ミトコンドリアではATP合成酵素と電子伝達系(プロトンポンプ)が存在します。
一方葉緑体ではATP合成酵素と電子伝達系に加えて、光捕捉系が存在します。
そして葉緑体が捕捉する光は赤なのです。
波長の短い青い光は大気中で散乱してしまいます。
一方波長の長い赤い光は大気の中で散乱することなく、地表に到達し、そして植物の奥深くまで入っていくのです。
アレキサンドライトレーザーの色もヤグレーザーの色も赤です。
葉緑体では電子伝達系に光が当たると、低エネルギーの電子が励起され、高エネルギーとなって次々と移動します。
これらの反応は光子があたって、10-6秒以内に瞬時に起こるとされています。

これらの様子を(図12)に示します。
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さてミトコンドリアの電子伝達系も低出力レーザーで活性化することがすでに報告されています。
この現象はミトコンドリアが植物の葉緑体の相似体と考えれば当然のことです。
そしていままでの高出力レーザーのメカニズムは、ターゲットとする色素の熱による破壊でした。
ですからシミやあざや血管腫が治療可能なのです。
しかしながら低出力レーザーのメカニズムはターゲットとなるミトコンドリアの活性化なのです。
そしてミトコンドリアの電子伝達系は赤茶色なのです。
そして1064nmより波長の長いレーザーで若返り効果をうたっているものがありますが、なかなか治療効果が出にくいようです。
これは1064nmより波長が長くなると、レーザー光が水に吸収されてしまうからだと考えられます。
我々の体重の75%が水です。
波長の長いレーザーでは皮膚の表層に大量に存在する水によりそのエネルギーが吸収されてしまい、深部に到達しないのでしょう。
しかしながら非常に興味深いことがあります。
大部分の患者さんは、痛くないヤグレーザーを好みます。
でも一部の患者さんは、痛くてもアレキサンドライトレーザーの方が効果を感じるので、アレキサンドライトレーザーのほうを希望するのです。
ミトコンドリアの感受性がヒトによって異なるのでしょうか?
この事実はこれから解明しなくてはならない謎です。