第15回

アレキサンドライトレーザーでシワ、タルミが治ります



本来メラニンに反応する、シミ用のQ-スイッチアレキサンドライトレーザー(Q-ALEX)を使用することにより、クレーターが治ることを報告しました。
そしてクレーターが治ったあとも、レーザー照射を希望する方が続出しています。
その理由はビタミンA、Cを塗るともちろん肌の調子がよくなるが、レーザー照射も一緒にすると肌の弾力性が増してプリプリする、もっと顔がたれなくなるというものでした。
照射後、数時間で垂れた皮膚が上がってくるのがわかると言う方もいます。
私は本来シミの治療用であるQ-ALEXの出力を下げて治療に使用しました。
そして角層や表皮角化細胞の上層に軽いダメージあるいはエネルギーを与えることにより、上皮化反応が起こり、皮膚が平らになるのではと考えて使用したのでした。
皮膚が平らになった後もレーザーを使用することにより、何かが起こっているのです。
私は、平らになった皮膚でもレーザーを照射することにより、表皮細胞の増殖が盛んになっている可能性を考えました。
表皮細胞の分裂速度は加齢とともに低下します。
しかしながらビタミンA、Cを塗ることにより、表皮細胞の分裂速度は上昇し、キメが改善することを以前、キメって何だろうと題して解説しました。
表皮角化細胞は分裂を繰り返しながらだんだん表皮の上層に向かい、角層となり、ついには垢となって脱落します。
この時、細胞はいろいろな方向に分裂します。
当然横方向にも分裂します。
しかしながら我々の体の表面積や手,足の長さには限りがあります。
では増加した皮膚の広がりを吸収するにはどうしたら言いのでしょうか?
答えは皮膚が凸凹になればいいのです。
すなわちキメとはシワと異なり、皮膚の表面にある微妙な紋様(凸凹)をさすのです。
若い肌ではケラチノサイトの分裂を含む代謝が盛んで、たくさんの深い溝があります。
これに対して高齢の方では代謝速度が減ってきます。
その結果溝の深さも数も減ってきます。
キメの詳細については大手小町のバックナンバー、皮膚のキメって何だろう(2000,6,9)を参照してください。

私はまず自分の皮膚にレーザーを2週間、照射してみました。
その結果溝の深さが深くなり、溝と溝の間隔も増加しました。
すなわち皮膚の代謝が上ってきたのでした。
図1はレーザー照射前、図2はレーザー照射後のものです。
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この結果に勇気を得て、今度はレーザー照射とビタミンA,Cの外用を併用しました。
レーザーを照射したのは私の腕です。
目印になるように老人性のイボを中心に照射しました。
1ヶ月間照射したところ、キメの明らかな改善だけでなく、皮膚全体がイキイキと盛り上げってきました(図3,4)
これらの結果より表皮角化細胞の代謝はレーザーを照射することにより増加し、さらにビタミンAやCを併用することによりさらに上昇することが明らかとなりました。
しかしこれらのデータだけでは皮膚が垂れなくなる、皮膚の弾力性が増して、プリプリするという患者さんの声を完全に説明するには不充分です。
そこで、真皮のコラーゲン(膠原繊維)やエラスチン(弾性繊維)という繊維に影響を及ぼしている可能性を考えました。
コラーゲンは水分の保持やしなやかさの維持に大事な働きをしています。またエラスチンは皮膚の弾力を保持します。
これらの繊維が衰えると、シワやタルミが生じます。
20代後半の額に軽い横ジワがある女性に2間の間に2レーザーを照射しました。
その結果驚くべきことに、額のシワはほとんど消失してしまいました(図5,6)
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もちろんビタミンA、Cの外用は行っていません。私も患者さんもびっくりしてしまいました。
コラーゲンやエラスチンに対する組織学的影響を検討するために、実験を行いました。

たった2週間で明らかな、表皮角化細胞、コラーゲン、エラスチンの著明な増加がレーザー照射のみで出現したのです。
レーザーによるシワ取り効果については、当初はレーザーがコラーゲンやエラスチンにダメージを与えることにより、真皮の創傷治癒機転(ケガを治す組織反応)が起こると説明されていました。

表皮にも真皮にも損傷はまったくありません。
私はレーザーを照射することにより、各種の成長因子や増殖因子が分泌されたため、
あるいはレーザーが直接細胞にエネルギーを与えたのではと推測しています。
そしてこのアレキサンドライトレーザーはメラニンに反応する性質をもっています。
蛋白や水とはほとんど反応しません。
一体どのようなメカニズムで皮膚の若返りが起こったのでしょうか?
この臨床実験結果を、メラニンを持つヒトに当てはめるのは乱暴だと思います。
しかしながらヒトでもレーザー照射後に表皮角化細胞とエラスチンが大幅に増加することを、私は自分の皮膚で確認しました。
私はすでにシミ用に利用されているQ_スイッチアレキサンドライトレーザーを使用して顔全体の若返り療法を行っています。
シワ、たるみ取り専用のレーザーを使用していません。
ですから顔全体の照射料金も極めてロウコストに抑えることが可能になりました。
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シワ取り専用のレーザーを使用している施設では、1ショット1000円くらいで料金を設定している場合が多いようです。
顔全体では約1000ショット必要です。
これでは顔全体で1回、100万円という非現実的なコストとなってしまいます。
私のクリニックでは、顔全体でも5万円で行っています。両頬だけなら2万円です。
より良いものをより安く提供することも、医師の大事な使命だと思います。
私の知る限り、シミ取り用の、Q-スイッチアレキサンドライトレーザーが皮膚の若返り効果を持つこと、そして、コラーゲンやエラスチンなどのさまざまな成分が増加することの報告は世界のどこにもありません。
私が世界で最初の報告者だと思います。
このアレキサンドライトレーザーは、メラニンと良く反応します。
ですから出力をすこしでも上げて使用すると、メラニンを持つ表皮角化細胞と強く反応し、ヤケド、色素沈着を起こしてしまいます。
使い方が非常にデリケートなレーザーなのです。
私が満足いく使用ができるまでには、約1年の歳月が必要でした。
使用前に麻酔のクリームを塗り、約30分後にレーザーを照射します。
照射直後は顔が赤くなりますが、約30分冷却すると赤みは消えます。
その後はお化粧して帰宅できます。
何日も顔が赤くなったり、皮膚がむけたりすることはありません。
2週間から1ヶ月に1回のペースで照射を継続することにより、肌の良い状態をキープできます。
ビタミンA,Cの外用を併用すればさらに完璧です。
1回のペースで照射を継続することにより、肌の良い状態をキープできます。
ビタミンA,Cの外用を併用すればさらに完璧です。

私がアレキサンドライトレーザーで、皮膚の若返り療法を確立することができるようになったのは、レーザーを使用すると肌の調子がいいとアドバイスしてくれた患者さん、そして私を信頼して長い間通院してくれた大勢の患者さんのおかげです。
これらの患者さんには心の底より感謝しています。
レーザーによる皮膚の若返り療法のメカニズムが明らかにされることにより、皮膚科学の新しい1ページが開かれると確信しています。
私はなぜこのような変化が生じるのか知的好奇心で一杯です。