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より美しい毛穴を目指して《2章:メカニズム編》

より美しい毛穴を目指して《2章:メカニズム編》

潤いのある引き締まった毛穴を目指すにはどうしたらいいのでしょうか?

皮脂の主な原料は血液中の中性脂肪です。
新たに合成するより少ないエネルギーで済むからです。
血液中の脂質はLDL受容体を介して皮脂腺細胞に取り込まれ、リポ蛋白リパーゼの作用で脂肪酸に分解されて皮脂腺の細胞に移送されます。
高脂質食では血液中の中性脂肪の値が大きく上がります。
その結果皮脂腺細胞に脂質がたくさん取り込まれて、皮脂の分泌が増加します。高糖質食ではインスリンや男性ホルモンが増加します。
これらも皮脂の分泌を増加します。毛穴の開き、皮脂分泌増加で悩んでいる方は食生活を見直し、改善することがとても大切です。
高蛋白食はアラニン、バリンなどのアミノ酸が血液中に増加します。
これらのアミノ酸は細胞における脂肪酸の合成を抑制します。
またビタミンCやビタミンB群をたっぷり含む食事はこれから述べるように皮脂の分泌を抑えます。
“血液中の皮脂、糖質が皮脂の原料になるのであれば、それらを細胞の発電機であるミトコンドリアで使用して、
コラーゲンの合成や表皮細胞の健全な増殖を行えば、皮脂腺細胞に行く原料が減って、皮脂の分泌が低下すると同時にアンチエイジングも行えるのでは”
と考えました。
我々が摂取した食事の栄養分は消化管から全身の細胞に運ばれます。

これらの栄養素は細胞内のミトコンドリアに取り込まれます。
ミトコンドリアではこれらの栄養素が代謝されてアデノシン3リン酸(ATP)という高エネルギー物質を産生しています。
ATPは細胞の増殖やコラーゲンの合成、神経伝達物質の合成、筋肉の運動のために使用されます。
ATPは生物が生きていく上でなくてはならないものなのです。
ミトコンドリアでは皮脂の産生は行われません。皮脂は細胞内の分泌小胞という器官で作られます。
摂取された炭水化物は細胞でピルビン酸に分解されて、ミトコンドリアに入ります。ピルビン酸に分解される過程にビタミンは必要ありません。
蛋白質は脱アミノ化を受けてからミトコンドリアに入ります。
この反応にはビタミンB3が必要です。
脂質がミトコンドリアの外側でβ酸化により分解されて脂肪酸になるにはビタミンB7が欠かせません。
糖質をミトコンドリア内に取り込むのにはビタミンB1が必要です。
脂肪酸を細胞質からミトコンドリアに取り込むにはカルニチンという物質が必要で、カルニチンの合成にはビタミンCが必須です。

その後これらの栄養素はミトコンドリア内で代謝されます。ピルビン酸や脂肪酸がアセチルCoAというエネルギー代謝産物になるにはビタミンB1,2,3,5,そしてαリポ酸が必要です。
クエン酸回路を進めるにはビタミン1,2,3,5が補酵素として必要です。
この反応を促進するにはビタミンB6,12 も必要とされます。
クエン酸回路での代謝の結果、ニコチンアミドアデニンディヌクレオチド(NAD、NADに水素が結合するとNADH)というほかの物質に電子を与えたり受け取ったりする性質を持つ電子供与体が生じます。
NADHは電子伝達系というミトコンドリアの内膜にある器官に電子を供与します。
電子は電子伝達系の中を走り、ミトコンドリアの外から入った酸素と結合して水になります。
このとき、電子伝達系がミトコンドリアの内膜の内側から、内膜の外に水素イオンをくみ出します。
内膜と外膜の間の水素イオンがどんどん増加して最後には、ATP合成酵素の中を貫通してミトコンドリア内に戻ります。
この時ATP合成酵素がATPを作るのです。
電子伝達系が円滑に働くにはビタミンB2とコエンザイムQ10が必要です。
ミトコンドリアが円滑に働くためにはビタミンCとビタミンB群などが必要なのです。
クエン酸回路や電子伝達系を活性化するのに必要なビタミンB群そしてビタミンCを摂取そして外用すれば、全身および皮膚のミトコンドリアの活性が増加します。その結果、表皮の増殖、セラミドの増加や毛穴周囲を含む真皮全体のコラーゲンの合成が増加してアンチエイジングと皮膚バリア機能アップが起こると同時に、皮脂腺細胞に移行する脂質や糖質が低下して、皮脂分泌が抑えられて毛穴も目立たなくなるのです。
青山ヒフ科クリニックではビタミンB2、ビタミンB6以外にビタミンB3、ビタミンB5も処方しています(ビタミンB3、B5は自費になります)。

前述したことを、図にまとめました。
僕が注目したのはビタミンB3とビタミンB5です。
ビタミンB3はナイアシンあるいはニコチン酸、ニコチン酸アミドとも呼ばれます。
ニコチン酸アミドやニコチン酸は必須アミノ酸であるトリプトファンからある程度合成できるので、
厳密な意味ではビタミンB3と呼ばないほうがいいのかも知れません。
炭水化物が分解してできたピルビン酸や脂質が分解してできた脂肪酸は上の図に示すように、ニコチンアミドアデニンディヌクレオチド(NAD、NADに水素が結合するとNADH)という電子供与体となり、電子伝達系に電子を供与するのですが、驚くべきことにNADやNADHの一部はビタミンB3から構成されています。

ビタミンB3はNAD、NADHの前駆体であり、ビタミンB3が豊富にあればNADやNADHさらには目的物質のATPが大量に作られるのです。
さらにNADHにリン酸基が結合するとNADPHという物質になるのですが、NADPHはグルタチオンという抗酸化物質を還元します。
還元型グルタチオンは酸化したビタミンCを還元します。
すなわちビタミンB3はグルタチオンを介してビタミンCの作用を強化するのです。
さらに内服することにより皮脂の大部分を占める血液中のトリグリセリドやコレステロールの値を下げるのです。
そして善玉コレステロールであるHDLの値は上げるのです。

ビタミンB3やその誘導体は内科領域で血液中の脂質を下げる抗脂質剤として使用されています。
ビタミンB3はNF-kBという転写因子の活性化を抑制して、炎症を起こし皮脂分泌を促進するIL1αの産生を抑えることも報告されています。
NADHの代謝産物であるニコチンアミドモノヌクレオチド(NMN)はアンチエンジング、代謝促進サプリメントとしても注目されています。
紫外線などによりダメージを受けたDNAを修復する酵素poly (ADP-ribose) polymerase(PARPs)はNADを基質とします。
寿命延長遺伝子をして脚光を浴びる遺伝子サーチュインが産生する酵素の基質もNADです。
ビタミンB3はともすれば、軽視されやすいビタミンですが、実は非常に重要な作用を持っているのです。
血液中の脂質を低下させる作用はビタミンCやビタミンB5(パントテン酸)も持っています。
ビタミンCは細胞中の遊離脂肪酸をどんどんミトコンドリアに取り込んでATPを作ってしまうので、血液中の脂質を低下させるのは当然の作用ですね。
ビタミンCは糖質も下げて抗糖尿病作用を発揮することも報告されています。

ビタミンB群の構造を調べると、エネルギー代謝の重要な補酵素であるアセチルコエンザイムA(アセチルCoA)はビタミンB5(パントテン酸)にATPが結合した構造であることがわかりました。
ビタミンB5がたっぷりあればアセチルCoAそしてATPがたくさん作られるということが明瞭に示されています。
ビタミンB5は糖質、脂質、蛋白質のエネルギー代謝に必要です。
ビタミンCと一緒にビタミンB5を一緒に摂取すると血液中のビタミンCの濃度も上昇します。
ビタミンCの吸収にはエネルギー(ATP)が必要です。
消化管の細胞にビタミンB5がエネルギーを与えて吸収率を増加させるのでしょう。
シナールというビタミンC製剤にもビタミンB5は少量入っています。
おそらくほかのビタミンB群も加えれば吸収率はさらに上がるのでしょう。
でもそうするとシナールはカクテルビタミンになりコスト的に合わないのでしょう。
僕たちはカクテルビタミンを摂取して消化管からの吸収率を上げましょう。
もし消化管と同じことが皮膚で起きているとすると、ビタミンCだけでなく、カクテルビタミンを塗るべきですね。

余談になりますが、ビタミンCやビタミンB群 は消化管の運動を活発にして便秘を解消する作用があります。
ストレスがあると便秘になることがよくあります。
便秘解消にもビタミンは有効です。
またストレス解消にはリラックスする時間を持って副交感神経を優位にすることが有効です。
この時副交感神経からはアセチルコリンという物質が分泌されます。
アセチルコリンの分泌にもビタミンCやB群は必要です。
すなわちビタミンCやビタミンB群は皮脂分泌を直接抑えるだけでなく、副交感神経を活性化して皮脂分泌を抑制するのです。
本題に戻ります、細胞内で皮脂の原料になる脂肪酸が合成されるにはアセチルCo-Aカルボキシラーゼ(ACC)という酵素が必要です。
したがってACCを抑制すれば皮脂の中の60%を占めるトリグリセリドの合成は抑えられます。
またコレステロールの合成をするのが、HMG-CoAリダクターゼ(HMGR)という酵素です。
これら二つの酵素を抑制するのが、ビタミンB5です。
フォスフォリパーゼA2という酵素はこれら二つの酵素の活性を上げます。
リコカルコンAという前述した甘草エキスはフォスフォリパーゼA2を抑制することで、ACC抑制、すなわち皮脂合成を抑制します。
これらの結果をまとめると下の図のようになります。

上の図は皮脂分泌を促進する血液中の糖質、脂質を表皮細胞や線維芽細胞のミトコンドリアで消費して、皮脂腺細胞に移行しにくいようにしようという戦略を図式化したものです。
表皮細胞のミトコンドリアが活性化すると、表皮細胞の増殖と皮膚バリア機能増加が起こります。
毛穴周囲を含む真皮全体のコラーゲンも増加します。アンチエンジングと毛穴引き締め効果の両方が発現します。
ミトコンドリアは表皮細胞や線維芽細胞だけでなく、皮脂腺細胞にもあります。
飽食により血液中の糖質、脂質が増加し皮脂腺細胞などのミトコンドリアが活性化すると、大量のATPが産生されます。
するとATPによりクエン酸回路のイソクエン酸デヒドロゲナーゼという酵素が抑制され、ミトコンドリアに大量のクエン酸が蓄積します。
生じたクエン酸はミトコンドリアの外に移動して、アセチルCoAになります。
アセチルCoAはアセチルCoAカルボキシラーゼ(ACC)という酵素の作用でマロニルCoAを経て皮脂や蓄積脂肪になるのですが、
ACCの作用はビタミンB5やリコカルコンAで抑制されるのです。ATPはコラーゲンの合成や表皮の増殖で代謝されるとAMPに分解されます。
AMPはAMPKというリン酸化酵素を活性化します。
そしてAMPKはACCを抑制します。できてしまったATPを代謝に利用してAMPにしてしまうことが大切なのです。
またイソクエン酸デヒドロゲナーゼはビタミンB3依存性の酵素です。

ビタミンB3が大量に存在すると、ATPによるクエン酸回路の停止指令に反応しにくくなります。
毛穴レスローションにはビタミンB3が豊富に配合されています。その結果、強力に皮膚の代謝が促進されてATPをAMPに分解し皮脂合成を抑えます。
血液中のVLDLなどのリポ蛋白は脂質に蛋白質が結合したものですが、これは表皮細胞などのミトコンドリアの脂質の消費で低下させます。
血液中の糖質も同様にミトコンドリアに取り込んで消費させて低下させます。
できてしまった皮脂腺細胞内の皮脂の分泌はビタミンC、リコカルコンA、抗炎症作用を持つ植物エキスで抑えてしまおうという戦略です。
今までの毛穴対策ローションは皮脂の分泌を抑える作用のみでした。
青山ヒフ科クリニックのオリジナル外用剤として開発した毛穴レスローションは、皮脂の分泌抑制作用だけでなく、
血液中やミトコンドリアからの脂肪の動員や合成をも抑制する、まったく新しい抗毛穴作用と代謝促進作用を持っています。
さらにビタミンCやビタミンB群はセラミドの合成を促進して皮膚のバリア機能をアップし水分の蒸発を防ぎます。
潤いのある肌と引き締まった毛穴そしてアンチエイジング作用を同時に実現するのです。

第3章《トリートメント編》へ続きます。